DFにとってもカメラマンにとっても捕まえにくい
浦和は後半スタートから興梠を入れて前線の停滞を緩和させた。興梠はいい意味で自由にプレーし、試合の流れを見て、ボールをさばく役も買って出る。浦和のFW陣の中ではプレーエリアが広く、あまり決まった動きをしない。だからDFは捕まえにくいプレーヤーだろう。それに加えて、カメラマンである私も捕まえ(撮影し)にくい選手の一人だ。基本的に、サッカーはボールを持った写真が絵になるため、ボールを持った瞬間を狙っている。
話は外れるが、90分の中で、ボールを持ってプレーするのは1人多くて2、3分程度と言われている。その中で、どれだけボールを持った選手のいい写真を撮れるかがカメラマンのひそかな戦いだ。
話を戻すと、興梠の動きは読みにくく、ボールを持った写真も少ない。ましてやゴールシーンを撮れた思い出があまりない。そんな動き回るFWが入ったことで、ボールもうまく回り出す。さらに64分に2人同時に変えて、早くも交代枠を使い切った。すると74分捕まえにくい興梠をついに捕らえた。写真で!
小笠原満男に対して縦に仕掛けた興梠慎三。写真では右足がかかっているように見える【写真:松岡健三郎】
小笠原は捕まえきれず、縦への突破につい足が出てしまい、若干ファールをもらいに行ったような突破からPKを獲得。これが試合の流れを大きく変えるワンプレーとなり、自ら右足できっちり右に決めた。
鈴木優磨はPKを読んでいたが、それを上回るコースに蹴った興梠の勝ち【写真:松岡健三郎】
続く75分にもこぼれ球を武藤雄樹が決めて一気に試合を振り出しに戻した。このとき浦和サポーターは興梠のゴール不敗神話を信じたはずだ。昨年、興梠がゴールを決めた11試合すべて勝利していたからだ。
しかし83分、遠藤航のバックパスミスから鈴木優磨に決められて、これが決勝ゴールに。興梠がゴールを決めたが、浦和は勝つことが出来なかった。
それでも興梠が入ったことで浦和のボールの動きがらしさを取り戻したのは間違いない。しかし試合後本人は「本来の動きはできなかった」と振り返る。だから私もいい写真が撮れたのだろう。
佐藤寿人、大久保嘉人に続き、日本人FWは30歳からと思わざるをえないほど年々うまくなる興梠の本調子を、試合の流れの中で捕えられるかどうかが私の今年も目標となりそうだ。
(写真・文:松岡健三郎)
【了】