名門の降格危機も…ポジティブな思考が最大の強み
とはいえ、この先もバイエルン・ミュンヘン、ボルシア・メンヘングラッドバッハ、ヘルタ・ベルリンと難しい相手が続くため、残留争いは息を抜けない。過去数年間もそうだったがHSVは最後の最後までプレッシャーのかかる戦いを余儀なくされそうだ。しかし、酒井本人はどこまでも前向きだ。
「ちょっと責任感なく聞こえちゃうかもしれないですけど、実は降格争いに対してのプレッシャーはそこまで感じてないと言うか。というのも、いい試合ができた時の自分たちのクオリティを知ってるから。それが毎試合出せれば、HSVは全然残留争いなんかするチームじゃないと思ってるんで。ここ数試合はうまくいってる手応えも感じています。だからプレッシャーを感じてるって言うより、『楽しんでる』って言った方がいいかなっていう感じですね」
そのポジティブシンキングが酒井高徳の最大の強みかもしれない。日本人は苦境に陥るとナーバスになりがちだが、そういうメンタリティはこの男にはない。ある意味、日本人の枠を超えた新たなフットボーラー像を彼は今季のブンデスリーガで示し続けているのだ。
そんなキャプテンが常に強気の姿勢を失わず、勇敢に戦い続けていれば、チーム全体が下向きになることはない。だからこそ、ギスドル監督もこの男にリーダー役を託したのだろう。
HSVの残留請負人として、日本人キャプテンは今季終盤もタフに走り続けていくはずだ。
(取材・文:元川悦子【ハンブルク】)
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