「『自分がキャプテンをやりたい』ってやつはだいたい良いキャプテンじゃない」
こういった発言を聞いていると、酒井が肩に力が入ったエゴイストなキャプテン像を追い求めているのではないかと思われがちだが、そうではない。彼の「チーム第一」という姿勢は首尾一貫している。
「キャプテンは『自分がやりたい』って言ってやるもんじゃないと思います。監督が僕を指名してきた時も正直ビックリしたし、周りもビックリしたはず。そのくらいの選手がやるべきだと思うんですよね。
僕の考えでは、『自分がキャプテンをやりたい』ってやつはだいたい良いキャプテンじゃない(苦笑)。『キャプテンマークを巻きたい』と言う人は基本、目立ちたがり屋だから。確かにキャプテンは目立つけど、他の選手より目立たないようにすることが大事かなと僕は思っているんで。日本代表のハセさん(長谷部誠=フランクフルト)も目立ちたいタイプじゃないですよね。『代表でもやったらどうか』って話をよくされますけど、それにふさわしい選手は他に沢山いる。僕はそういうふうに捉えています」と、酒井は黒子に徹することの重要性を強調していた。
18日に開催された第21節フライブルク戦を見ても、献身的にチームを支えようとする彼の哲学が随所に垣間見えた。この日のHSVはアーロン・ハントが前半15分に先制。幸先のいいスタートを切ったが、味方のパスミスをきっかけに攻め込まれ前半23分同点弾を許してしまう。このシーンでも一歩間に合わずにゴールを許したが、最後まで諦めずに体を張ろうという酒井の意識は前面に出ていた。
後半12分のミヒャエル・グレゴリチュの2点目も、長い距離を懸命に走ってルイス・ホルトビーからの横パスを引き出しアシストに成功。最終的には2-2で引き分けたものの、酒井のアシストがなかったらHSVは勝ち点1を確保できず、マインツに勝ったブレーメンに抜かれて16位に転落していたところだった。何とか残留圏内の15位を死守した意味は今後に活かされるだろう。