香川が見つめるポジティブな視点
2つの「考え方」=ネガティブな前者と、ポジティブな後者。香川の「考え方」は、もちろん後者だ。
「僕は後者の考え方ですし、前者の考え方になる可能性は十分あるんですけど、そういう時でも自分自身をしっかりと持って、自分自身に対して厳しくやるしかないですし、そこで流されるか流されないか。考え方で変わると思うので、そこをしっかりやれていると思います」
香川が語る「そういう時」、つまり出場機会に恵まれない中でも、自分を律して、自己を保つ。見失いがちな「自分を表現するんだ」という気持ち。流されることなく、強く抱き続けている。
「やはり2、3試合出られないだけで、少しフラストレーションだったり、感覚的にはちょっと気持ちの部分で難しさだったり、色んな感情があるんですけど、それを押し殺してやるようにしています」
ヴォルフスブルク戦では、微かに“兆し”が見えた。75分、オーバメヤンに絶妙なスルーパス。あと一歩でアシストだった。
「こういう小さな積み重ねで得られる自信をね、今は必要としているし、ピッチに出るのもそうですし。そういう中で少しずつ段階を踏んでいって結果というものがついてくると思うので。この方向性は間違っていないですし、その気持ちを強く持って、またやっていきたいと思います」
90分、ピシュチェクからのパス。アーノルドを背負って受けて、弾き飛ばし、そのままドリブル。1対1で強さを見せた。
「上手く一歩出れましたし、体も預けれましたし、今やっているトレーニングであったり、そういう日々の積み重ねがね、相手がどうこうではなくて、こういう本番のピッチの中で出せたことは、少しまた自信になりますし、今度はそれをさらにゴールに繋げるようにやっていきたいです」
こういったことは、レギュラーを張っている時であれば、取り立てて触れることではないかもしれない。また、与えた20分間における一連の香川のプレーを、トゥヘルがどのように受け止めたかは、次の試合になって蓋を開けて見ないとわからない。しかし過酷な生存競争の中、なかなか出番が訪れない今では、練習から段階を踏んで自信を積み重ね、試合の中の1つ1つのプレーで、それを確かなものとしていく必要がある。
「試合で得た感覚をプラスに変えるための、すごくいい感覚は得られたので、次また1週間空くんですけど、いいトレーングをして、いいイメージを持って、頑張っていきたいと思います」
そしてライバルたちから先発を奪い返すイメージ。見失うことなく、強く抱いている。
「常にそのイメージを持って練習していますし、彼らに絶対負けないっていう気持ちを持ってやっているので、後は監督が決めることで、そのために今は結果が必要なのかなあと思っています。いい練習はできている。それは常々感じているし、いい練習ができていれば、必ずそれが自信になってピッチに現れると思う。ましてやいい練習ができているから、このチームに入れば必ずできるっていう強い自信もあります」
香川の心は、決して後ろを向いてはいない。シビアな戦いの中で、結果を残すために。
(取材・文:本田千尋【ドルトムント】)
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