ベトナムへと渡ったフェアー・モービー
HAGLで戦うフェアー・モービーと井手口正昭【写真:宇佐美淳】
ベトナムプロサッカー1部リーグ(Vリーグ)に今シーズン、新たな“サムライフットボーラー”がやってきた。彼の名は、フェアー・モービー。スイス人の父と日本人の母を持ち、アメリカ・ニューヨークで生まれ、幼少期に東京に移り住むという国際色豊かな環境で育った22歳の若武者だ。
フェアー・モービーはこれまでに、自らのルーツである3か国のクラブに所属した経歴を持つ。日本では東京ヴェルディユース、スイスではFCバーゼルの下部組織、プロデビューを飾ったのはアメリカMLSのポートランド・ティンバーズだった。2011年には、U-17アメリカ代表として、FIFA U-17ワールドカップにも出場している。
その後は、J3のSC相模原でもプレーしたが、2016年に契約満了で退団。さらなる飛躍を求めて、新たな挑戦の地であるベトナムへとやってきた。入団が決まったのは、同国1部屈指の人気クラブで、不動産開発大手がスポンサーを務めるホアン・アイン・ザライ(HAGL)だ。
HAGLには昨年、日本人MF井手口正昭がJ2横浜FCから移籍。両クラブは一昨年末に業務提携を結んでおり、HAGLからはベトナム代表MFグエン・トゥアン・アインが横浜FCに期限付き移籍(※すでにHAGLに復帰)。一方の横浜FCからは井手口が完全移籍でHAGLに加入した。
Jリーグ各クラブが推進するアジア戦略の一環で、ビジネス色が強い移籍と考えられていたため、当初は活躍が期待されていなかった井手口だが、HAGLが標榜する繋ぐスタイルのサッカーにはうまく溶け込むことができた。
日本人選手が多くプレーするタイやカンボジアと異なり、日本人選手不毛の地として知られるベトナムにおいて、レギュラーとしてシーズン通して井手口が活躍できたことにより、僅かにではあるが、日本人選手の株も上がり、日本人選手への門戸が開かれつつある気配が感じられる。