育成して送り出すだけでなく、戻ってくるルートも
羽田経由で伊丹空港に降り立った到着ロビーでは、人混みのなかから玉田社長を見つけ出し、駆け寄って頭を下げている。
「私も彼も初対面だったんですけど、『社長、ありがとうございます』と言ってくれました。今年のチームが始動するときに、私は『ファンやサポーター、スポンサー企業、そしてスタッフに対して感謝の気持ちを忘れずに1年間やっていこう』と選手たちを集めて言いました。当然ですけど、そのときに清武はいませんでしたけど、そういう感謝の気持ちをもってくれていることは嬉しかったですね」
一夜明けた3日には大阪・北区にあるヤンマー本社を黒いスーツ姿で訪れ、移籍金捻出に尽力してくれたことに「ヨーロッパで4年半経験したことを、結果で示したいと思います」と感謝の思いを伝えている。
ワールドカップ日韓共催大会代表のFW西澤明訓をはじめとして、MF香川真司(ボルシア・ドルトムント)、FW乾貴士(エイバル)、近年ではMF南野拓実(ザルツブルク)とヨーロッパへ数多くの選手を輩出してきたセレッソだが、玉田社長のもとで新たな流れを作り出そうともしていた。
「ウチはいままで育成型クラブという位置づけでやってきましたけど、実際には選手が出ていくばかりでした。もちろん海外へ出し続けることも重要ですけど、何らかのタイミングで戻ってくるケースも作りたかったんですね」
Uターンの第1号が昨シーズンの柿谷と、ドルトムントへ期限付き移籍していたMF丸岡満だった。特に柿谷の場合はバーゼル側が1000万ユーロ(約12億円)の違約金を設定していたが、粘り強く交渉を重ねた末に、玉田社長をして「5分の1、いや6分の1かな」と言わしめた減額に成功した。