岡崎慎司、10年間の変貌。恩師が語る順応する力
「オカ(岡崎慎司)の10年間の変貌ぶりはホントすごいですよ。特に際立っているのが環境に順応する力。最初からエリートでない中で滝二(滝川第二高校)に行って、結果を残して清水(エスパルス)に来たけど、そこでも初めは出られない状況からポジションを掴んだ。
日本代表でも、ドイツ、イングランドへ行ってもそうでしたよね。背景にあるのが『何とかして状況を打開するメンタリティ』。そこは飛び抜けたところがある。フィジカルとかテクニックとか能力は若干劣っていたかもしれないけど、それを補うだけのメンタリティとハートの強さをオカは持っているから。プロとしてはその部分が一番大事なのかなと思います」
2005年にプロ入りした際、清水で指揮を執っていた長谷川健太監督(現ガンバ大阪)がしみじみ語った通り、岡崎慎司ほど大いなる変貌を遂げたストライカーは皆無に近いと言っても過言ではない。釜本邦茂、三浦知良(横浜FC)に次ぐ日本代表歴代3位の49得点という記録はそう簡単に打ち立てられないもの。滝川第二高の恩師・黒田和生監督(現台湾代表監督)でさえ「岡崎がここまで成長するとは思わなかった」と驚きを口にしていた。
滝二から清水入りし、Jリーグを主戦場にしていた頃の岡崎は相手守備陣の裏に抜け出してからのワンタッチゴール、あるいはヘディングシュートが目立っていた。頭からの得点が多かったのは、少年時代を過ごした宝塚ジュニアの頃からの座右の銘「一生ダイビングヘッド」をピッチ上で体現すべく、貪欲に取り組んでいた成果でもあったはずだ。
当時の岡崎の象徴的シーンの1つが、2010年南アフリカワールドカップ出場を決めた2009年6月のウズベキスタン戦(タシケント)の決勝弾。中村憲剛(川崎)のスルーパスに反応して裏を取り、いったんは左足でシュートを放ったもののGKにセーブされ、こぼれ球を頭で押し込む形で、「裏」と「ヘッド」の両方という得意パターンで奪った歴史的1点だった。
「(ラストパスが)足元に入ったなと思ったけど、跳ね返ってきて、たまたま近くに来て、勢いで入ったゴール」と本人は息を弾ませていたが、これが彼の大きな飛躍につながったのは間違いない。