英国を拠点としながらなぜプレミアリーグ放映権を持たないのか?
本拠である英国での知名度の低さは、偏にDAZNのような表立ったサービスが展開されていないためだ。その理由も単純。この国でスポーツのライブストリーミングを提供するとなればプレミアリーグ中継は欠かせない。ところが、国内の“プレミア中継市場”への参戦が難しいのだ。
プレミア放映権契約は今季から新たな3年間のサイクルに入っている。国内での権利を買った『スカイスポーツ』と『BTスポーツ』が支払った契約料は51億4000万ポンド(約7200億円)。Jリーグの放映権料と比べれば、契約期間は3分の1以下で金額は3倍以上だ。第2の花形コンテンツはCL中継だろうが、これも3年間10億ポンド(約1400億円)でBTスポーツの独占契約が始まったばかり。新参者が途中から割り込む余地はない。
ドイツでは、やはり放映権の問題でブンデスリーガの生中継が許されない穴埋めの一環として、試合のハイライトがDAZNで提供されているようだが、英国には『BBC』の「マッチ・オブ・ザ・デー」というハイライト番組の大御所も存在する。19年までの3シーズンで2億ポンド(約280億円)を超す契約料を払っているBBCが、母国で開催されるテニスのウィンブルドン大会中継に次ぐ看板と位置づけている番組でもある。
こうした状況を考えれば、デイヤー氏が英系オンライン情報誌上で「まずはコストが低く、成功率が高い市場から」と語っているのも頷ける。同氏は「毎年、DAZN提供テリトリーに3、4ヶ国を加えていきたい」とも言っており、英国も将来的なターゲットの1つだ。
時流は味方している。『タイムズ』紙の報道によれば、スカイスポーツが生中継した今季プレミア前半戦のテレビ観戦者は前年比で12%減。昨年10月のリバプール対マンチェスター・ユナイテッドは、月曜夜の試合でも過去3年間で最高の平均280万人という視聴者を集めたというデータもあることから、国民のテレビ観戦熱が冷めたというわけではないだろう。だが、従来のテレビ視聴率調査では計りきれないノートパソコン、タブレット、スマートフォンで観戦する人々の数が増えている事実は放送局側も認めるところだ。