パフォームのラシュトンCEO(左)とドコモの吉澤和弘社長(右)【写真:編集部】
今季よりJリーグを視聴できるライブストリーミングサービス「DAZN」が苦戦している。サービスの運営会社・パフォームは「順調中」をアピールするが、明るい話は聞こえてこない。
Jリーグの放映権を10年2100億円で獲得したパフォーム。単純計算では1年210億円、加入料は月額1750円なので、100万人が加入しなければ放映権料をペイできない。もちろん人件費などを考えると、それ以上の数字が必要だ。
昨季まで放映権を保有していたスカパー!の旧Jリーグセットの加入者数は、関係者の話を統合すると約20万人と推測できる。DAZNに関しては複数の関係者からの取材を基に予測するとその20万人にも遠く及んでいない(2月初旬時点)。パフォームは加入者数については未公表とし、同社のジェームズ・ラシュトンCEOは「伸びている。満足している」と語るが、内実は苦戦しているのではないか。
8日、パフォームはNTTドコモとの協業を発表。ドコモユーザーであれば月額980円で加入することができる(ドコモ以外だと1750円)。同社の動画サービス「dTV」は約450万人が利用しており、DAZNについてドコモ側は「できるだけ早く100万人を」と期待を寄せる。パフォーム側も同様の期待を抱いているが、そう簡単な話ではない。
1750円と980円の差額はあるのはもちろんのこと、980円をドコモとパフォームはレベニューシェアするのだ。ドコモ側はレベニューシェアの比率を明かさなかったが、980円がそのままパフォームに入らないことは確定事項。たとえ“ドコモブースト”がかかって早々に100万人加入者を達成したとしても、ビジネスとしての目標値には達しない。
DAZNのライバルはソフトバンクが提供し、海外サッカーや野球・テニスなどを配信する「スポナビライブ」となるが、奇しくも同じ8日、同社はスポナビライブの価格改定を発表。これまでソフトバンクユーザーは月額500円だったのが同ユーザーとワイモバイル、Yahoo!プレミアムの加入者は980円に、それ以外のユーザーは3000円だったのが1480円となった(なおフルHDを選択しなければ500円のまま利用することも可能)。
ソフトバンクはフルHD対応などサービスをグレードアップさせており、同社広報は「以前から検討していたが、この日にした」とドコモとDAZNの協業発表日を狙ったものであることを明言。携帯キャリアを巻き込んだユーザー獲得競争はさらに激化することは必至だ。
ラシュトンCEOは以前私に「300万人加入者を目指す」と語っていたが、厳しい戦いになるのではないか。真の狙いが他にあるのであれば話は別だが、加入者増を目指すならユーザー満足度を地道に上げていくしかない。期待と不安が入り混じるなか、Jリーグ開幕まで1ヶ月を切った。
(取材・文:植田路生)
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