1対1を制す。ポゼッション・フットボールの根底にあるもの
得点後はドルトムントに試合のペースが傾いていく。1対1で勝てるようになり、セカンドボールを拾えるようになった。63分にはロイスのサイドチェンジからクリスティアン・プリシッチがサイドアタックを仕掛けるなど、攻撃のバリエーションも増えていく。
それはトーマス・トゥヘル監督が嗜好する“ペップ的なサッカー”とはいささか趣を異にするかもしれない。パスを繋ぎ続けてボールを失わない限り、負けることはない。それがペップ・グアルディオラの掲げるポゼッション・フットボールの要諦だ。ボールを失った時の守備、つまりゲーゲンプレッシングを重要視するのも、マイボールを維持して、パスを繋ぎ続けるため。
しかし、パスの正確性が多少劣ったとしても、1対1に勝利し続け、セカンドボールを自分たちのモノにし続けるサッカーも、ポゼッション・フットボールと言えるのではないだろうか。
サッカーにはルーズボールと、それに付随する1対1の局面が必ず存在する。時代が移り変わり、戦術がどれだけ変化し、複雑化しようとも、変わることはない。むしろそれがサッカーの原点であり、そういった1対1の局面に勝利することが、何より重要なのではないだろうか。セカンドボールを拾い続ける限り、相手にチャンスを与えることはないのだ。
それこそがブンデスリーガを席巻するライプツィヒのサッカーであり、戦術が複雑化する潮流の中、誰もがどこかで1度は立ち戻る原点なのかもしれない。
ドルトムントがその原点に立ち返り、勝利を手繰り寄せた、ライプツィヒ戦だった。
(取材・文:本田千尋【ドルトムント】)
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