小野がチームに与える計り知れないほどの影響
ウェスタン・シドニー・ワンダラーズFCから加入したのは2014年6月。以来、度重なるけがに見舞われ続け、ピッチのうえでは決して満足できる数字を残していない小野だが、それでもチームには計り知れないほど大きな影響を与えている。四方田監督はこんな話をしてくれたことがある。
「誰よりも早くきて体のケアをしているし、全員でランニングするときには先頭に立っている姿を含めて、日々のトレーニングの雰囲気を非常によくしてくれている。本当に助かっていますよね」
練習拠点である「宮の沢白い恋人サッカー場」へ小野が到着するのは、練習開始時間のおよそ2時間前。常に入念な準備をほどこすサッカーに対する真摯な姿勢は、4度目のJ2降格を喫した2012シーズン以降、アカデミー出身の若手が多くなったコンサドーレを無言でけん引した。
そして、ひとたびボールを使ったメニューが始まれば、ボールタッチだけで周囲をうっとりさせる。卓越した技術はまったく錆びついていない。だからこそ、けがの連鎖に忸怩たる思いを募らせているはずだが、それで沈み込むような選手ではない。
後半途中から、それも最長で20分程度の出場が続いていた昨シーズンの夏。コンサドーレはJ2戦線の首位を独走していたが、終盤戦で必ず正念場が訪れることを長いキャリアが告げていたのだろう。小野はこんな言葉を残している。
「チームとしてそういう(プレッシャーを感じる)雰囲気になっても堂々とプレーできるように、みんなが自信をもって戦えるような環境を作っていきたい」
果たして、コンサドーレは胸突き八丁の終盤戦にきて失速を強いられる。清水エスパルスと松本山雅FCの猛追を受け、特にメンタル面が袋小路に陥りかねない状況で、小野はリザーブやベンチに入れない若手や中堅選手をときには食事の席をともにしながら叱咤激励していた。