「ヒロシがここを去ったのは、彼個人の事情があった」
モンチ氏にとって、清武が出場できなかった問題は「選手としてのクオリティーとは一切関係がない」ものであり、前述の監督交代や言葉の壁にあったという。そして、この冬の移籍市場で彼を放出した理由については、次のように説明する。
「ヒロシがここを去ったのは、スポーツ面だけが理由ではありません。彼個人の事情があったのです。ヒロシは私たちに対して、家族のことなどを考慮して退団することを求めました。私たちは、彼の一人間としての願いに応じることにしたのです」
もちろん、清武が退団を強く希望したとしても、セビージャにとって彼を無料で放出することは不可能である。セビージャが彼の放出額として最初に要求したのは、ハノーファーから獲得した額より50万ユーロ少ない600万ユーロ。一方で、C大阪が最初に提示したオファーは400万ユーロ+インセンティブだった。最終的に両クラブは、500万ユーロで合意に達した。
セビージャは清武に投じた費用をすべて回収できず、C大阪にとっては莫大な出費となるこの合意額。モンチ氏は欧州と日本における市場の相場に大きな開きがあることを考慮しながら、妥協点を探す交渉になったと振り返る。
「セレッソはヒロシを取り戻すために、大変な努力をしてくれました。交渉はとてもゆっくり進みました。しかし双方とも、ヒロシという選手のことを思って、合意に達することを目指しながら話し合ったのです」
モンチ氏は最後に、清武にエールを送った。「ヒロシ」は、これまで数多くの選手を観察してきたこのSDに、一人間として素晴らしい印象を与えたようである。
「新たな冒険が素晴らしいものとなることを願っています。ここセビージャから、彼にはそう伝えたいですね。ヒロシは選手、そして一人の人間として、とても素晴らしかった。ロッカールームでも愛される存在でした。彼には、できる限りの成功をつかんでほしいですね」
(取材・文:ロシオ・ゲバラ【セビージャ/マルカ】、協力:江間慎一郎)
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