カルロス・テベスの上海申花加入は大きな話題を呼んだが…【写真:Getty Images】
ここ最近、移籍関連のニュースで「中国」という単語を見ない日はない。ヨーロッパや南米が中心だったサッカー界は、中国マネーの波に飲み込まれてしまうのだろうか。
今冬の移籍市場でも中国クラブが猛威を振るった。破格の移籍金や欧州屈指の名門で活躍する選手をゆうに超える額の給与を提示され、ベルギー代表のMFアクセル・ヴィツェル、ブラジル代表のMFオスカル、アルゼンチン代表のFWカルロス・テベスといったビッグネームが次々に中国への移籍を決断した。
そんな中、今月16日に中国サッカー協会から驚きの発表があった。それはこれまで寛容だったはずの外国人枠削減だった。しかも新たなルールは3月開幕の新シーズンからすぐに適用されるとあって、各クラブは対応を迫られている。
これまでは外国人枠として「4人+AFC枠(アジア枠)1人」の登録が許されていたが、今季からはアジア枠が撤廃となり、試合に出場できる外国人選手が「3人」までになる。チームに選手登録できる数は「最大5人」と変わらないものの、レギュラークラスの外国人選手が3人いた場合、残る2人が飼い殺し状態になる可能性がある。
突然のルール変更によって影響を受けた選手たちも出てきた。オスカルを獲得した上海上港は、外国人を空けるために、コートジボワール人FWエヴラルドを2部の武漢卓爾に放出。韓国人DFキム・チュヨンの去就も不透明になっている。
また、1月初旬に上海上港との契約が発表されたポルトガル代表DFリカルド・カルバーリョも未だ選手一覧に掲載されておらず、宙ぶらりん状態になっている。
テベスを獲得した上海申花も外国人選手の整理を強いられた。現在はアルゼンチンから加入した期待の新戦力の他に、フレディ・グアリン、ジョバンニ・モレノ、オベファミ・マルティンス、キム・キヒと登録制限いっぱいの5人が登録されている。
そのためポルトガル1部エストリルへの期限付き移籍から復帰したブラジル人FWパウロ・エンリケにはすでに居場所がなく、そのまま母国のスポルチ・レシフェへと放出された。この冬にアルゼンチンのラシン・クラブから獲得した24歳のパラグアイ代表MFオスカル・ロメロも、上海申花で一度もプレーすることなくスペイン1部のアラベスへ貸し出されることが決まっている。昨年7月に大怪我を負ってリハビリ中だったデンバ・バもベシクタシュへ移籍した。
外国人枠に空きを作れなかった重慶力帆は、ボルシア・ドルトムントから獲得合意に至っていたFWアドリアン・ラモスを一旦グラナダへレンタル移籍させた。そして夏に改めて加入させる方向で動いている。
リーグによるルール変更発表直後にガエル・カクタを放出し、外国人枠に問題のなかった河北華夏も新ルール対策に余念がない。出場機会激減の恐れがあり、状況によっては不満分子になりかねないトルコ人DFエルサン・ギュルムを古巣ベシクタシュへレンタルに出した。
ジョン・オビ・ミケルやネマニャ・グデリを獲得した天津泰達や、ドラガン・ストイコビッチ監督率いる広州富力、ロビー・クルーズら多くのオーストラリア人選手を擁する遼寧宏運、元セレッソ大阪のブルーノ・メネゲウが所属する長春亜泰などは、現状6人以上の外国人選手在籍が確認できており、早急な人員整理が必要となっている。
ヨーロッパの移籍市場はまもなく閉鎖となるため、中国の各クラブで余剰戦力となった外国籍選手は移籍を急ぐか、クラブとの契約を解除して一度フリーになってから移籍先を探さなければプレーする場を失ってしまう。
高額な給与を約束されて潤う者がいる一方で、その影で中国を離れなければならない選手が増えている現実もある。“爆買い”ばかりが注目を集めがちだが、身勝手とも言える急なルール変更の影響は少なからず選手のキャリアに影響を及ぼしている。
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