大都市に根付かないサッカー人気
ベトナム都市部のクラブにとって、ファン獲得というのは切実な問題だ。ホーチミン市やハノイ市といった大都市は800万人ほどの人口があり、そこを拠点とするサッカークラブも人気が高いように思えるが、実際は地方や近郊から進学や就職のために出てきている人々が大半で、いわゆる地元っ子というのは少ない。また、ベトナム人は週末になれば何時間もかけて故郷に帰るほど郷土愛が強く、仮の住まいである都市部への愛着は薄い。
そのような文化的背景から、この2大都市のクラブは観客動員で常に苦しんできた歴史があり、特にホーチミン市ではこの数年、クラブの新設と解散が相次いだことで、国内サッカーファンに愛想を尽かされてしまっている。昨シーズン途中にハノイ市から移転したサイゴンFC(旧ハノイFC)も地域密着を掲げてはいるが、まだ人気が定着したとは言い難いのが現状だ。
サッカークラブの運営経験が皆無のレ・コン・ビンがいきなり会長職に就くということについては、国内でもかなりの論争を呼んだが、HFFは最終的にクラブの命運を新米会長に託すことにした。
レ・コン・ビン会長が任された仕事は、選手・コーチ陣の人選やスタジアムをはじめとした施設の改修に関する最終決定、チケット・グッズ類の販売促進など多岐にわたるが、HFFが最も期待しているのは話題性と集客力であろう。
HCMCは今オフにレ・コン・ビン会長の元チームメイトで、現役ベトナム代表のCBチュオン・ディン・ルアットと右SBアウ・バン・ホアンを獲得したほか、Vリーグで既に実績のある外国人選手や帰化選手の補強にも成功してオフシーズンの話題を独占。
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