「パス回しやボールをもらう動きではもっともっと成長できる」
昨シーズンまで3年間プレーした大宮アルディージャでは、群を抜く存在感を放った。特に2016シーズンは11ゴールと自身初、アルディージャの日本人選手としてもクラブ史上初の2桁得点をマーク。年間総合順位で5位に押し上げる原動力になった。
移籍を繰り返してきたなかで、ようやく絶対的な居場所を築きあげた。周囲の誰もがそう思っていたなかで、昨年6月に30歳を迎えていた家長は、公式戦で3度対戦したフロンターレに特別な思いを抱くようになった。
「フロンターレの選手のパス回しやトラップ、ポジショニングというのは、試合で対戦していても細かくて正確で、ボールを奪おうと思ってもまったくできなかった。僕自身は30歳になって、身体能力といったものはもう伸びないと思うけど、パス回しやボールをもらう動きではもっともっと成長できる。30歳になって再び挑戦したいと思ったんです。フロンターレには昨シーズン、36歳でMVPを獲得した(中村)憲剛さんをはじめとして、見習うべき選手が大勢いるので」
稲本潤一(現北海道コンサドーレ札幌)や宮本恒靖(現ガンバ大阪U‐23監督)といったワールドカップ代表選手、最近では宇佐美貴史(現アウグスブルク)や昨シーズンのJリーグベストヤングプレーヤー賞を獲得した井手口陽介を輩出してきたガンバの育成組織の歴史で、家長は異質な輝きを放っている。
育成組織の基盤を築きあげ、指導・統括してきた上野山信行氏(現ガンバ大阪アカデミー本部・強化本部担当顧問)に、ガンバ大阪ユースの最高傑作といえば誰か、という質問を投げかけたことがある。
「一番は、やっぱり家長でしょう」
もっとも、返ってきた言葉には、こんな但し書きがつけられてもいた。
「ポテンシャルでは、ね」
長くガンバの屋台骨を背負っている遠藤保仁からも、サッカー人生のなかで衝撃を受けた選手の一人として、家長の名前を挙げたことがある。
「彼がガンバのユースにいるときから『すごい選手がいる』と聞かされてきたし、実際にトップチームに昇格してきたときにはそう思いました。すぐにでもA代表に入ってくるんじゃないかと」