「幼稚園からプロまでずっと一緒」
遠くに富士山を眺める相模川沿いの馬入ふれあい公園サッカー場での練習を終え、シャワーを浴びて帰り支度を整えると、湘南ベルマーレの十代コンビ、MF齊藤未月とDF石原広教は自転車に乗り込む。
ゆっくりとペダルをこぎながら、国道1号線をわたってJR平塚駅へ。駐輪場に自転車をとめて、JR東海道線の上り電車を待ち、車内では終わったばかりの練習についてあれこれ語り合う。
いまに始まった日常ではない。湘南ベルマーレジュニアでチームメイトになった小学校5年生の4月から、ジュニアユース、ユースをへてトップチームでも。間もなく9年目を迎えようとしている。
もっとも、これはベルマーレでの日々に限った年数だ。ともに1999年の早生まれの2人が初めて出会ったのは、幼稚園の年長のとき。神奈川県藤沢市で活動するサッカー少年団、藤沢FCだった。
「それで僕のほうが先に、ベルマーレのジュニアに合格したんです。4年生の10月だったと思います」
今シーズンからトップチームへの昇格を果たした石原が記憶をさかのぼらせれば、石原に先駆けるかたちで、昨年5月にいわゆる「飛び級」でプロ契約を結んでいる齊藤が笑顔で続いた。
「実はヒロ(石原)につられて、自分もベルマーレに入ろうと思ったんです」
半年ほどのブランクをへて、齋藤もセレクションを突破する。再び幕を開けた切磋琢磨する関係。始まりが6歳のときだから、今年で何と14年目になる。今度は2人がそろって、ちょっぴり照れくさそうに声を弾ませた。
「幼稚園からプロまでずっと一緒、という選手は他のクラブにもまずいないと思います」
先に頭角を現したのは石原だった。ジュニアにはゴールキーパーとして入団したが、身長が伸びなかったこともあり、フィールドプレーヤーとしてジュニアユースに再挑戦して合格。中学2年生になると、ただ一人、ひとつ上の学年のチームに引き上げられ、試合にも出場するようになった。
「中学3年生になると、ヒロは県選抜にも選ばれていた。自分もたまに上のカテゴリーのチームに呼ばれましたけど、ヒロとは違ってベンチが多かった。もちろん、県選抜にも呼ばれませんでした」
当然ながら、負けん気に火がつく。その後に訪れた齋藤の変化は、常に近くにいた石原をも驚かせた。
「急に体が大きくなってきたんです。それまでは普通の選手だったんですけど、中学3年生の後半くらいから急に上手くなって。ミツキ(齊藤)は昔からストイックだし、陰ですごい努力をしているんだなと思いました」