一連のクラブ戦略の裏にいる実業家
これら一連のクラブ戦略の裏にいるのが、2013年1月にモナコのフロントに加わった、クラブの副会長兼ゼネラル・ダイレクターのバディム・バシリエフ氏、同じくロシアの実業家だ。
ファルカオらスター選手のリクルートに携わった彼は、2014年夏のW杯後にはロドリゲスやファルカオらを手放し、今後の方針を見据えてラニエリ監督とも袂を分かつことを決断した。
前述のファイナルシャル・フェアプレー問題を解決したり、本拠地がフランス国外にあることで税制で優遇されていると他クラブから指摘を受け、プロリーグ協会から調整金として5000万ユーロを請求されたときに、行政訴訟を司る国務院から「その請求は違法である」との判定を勝ち取ったのも彼の手腕によるものだと言われている。
表情は柔和だが、明確にポイントを指摘する話しぶりなど、切れ者であることがにじみ出ている。今のモナコを支える頭脳は、間違いなくこのバシリエフ氏だ。
ラニエリ監督の後任として現監督のレオナルド・ジャルディム氏を雇用したのも奏功した。短期間ギリシャのオリンピアコスを率いた以外は自国ポルトガル内でキャリアを積み上げていた彼は、世界的にはほぼ無名の存在だったが、今季のモナコの躍進を見ても、ジャルディム監督の功績は大きい。
彼の優れた点のひとつが、状況に合わせた戦略の選択が上手いことだ。そんなの監督なら当たり前だろう、と言いたくなるところかもしれないが、的確に状況を見極め、その状況に応じて必要な手を打つ、ということを冷静に、正しく行うのは難しい。簡単にできていれば誰もがチャンピオンだ。
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