すでに化学反応は起き始めている
小川とともに名波監督がよく名前を挙げるのが、大卒2年目の荒木大吾だ。昨年の鹿児島キャンプで活躍し、指揮官も評価。ブレイクを予感させたが、シーズン中の負傷離脱もあり試合で結果を残すことはできなかった。
彼もまた、中村俊輔との出会いで大きく化けるかもしれない。
例えば正確なサイドチェンジを大外で受けるようなシチュエーションは、荒木にとって“大好物”だ。自身のドリブルからチームの攻撃をスピードアップさせることができれば、チームの武器になる。味方とのコンビネーションから局面を打開する点ではまだ成長が必要だが、天才レフティーのタッチを見て学ぶことはできるだろう。
「Jリーグで一番凄いと思っていた選手と一緒にやっているのは、不思議な感じ」と、荒木は笑う。「トラップとかボールの置き所もそうだし、一つひとつのプレーのレベルが本当に高い」とすでに観察を始めているようだ。
昨シーズンは2ndステージに入ってスタメンに定着し、主にトップ下で攻撃の中核となった21歳の川辺駿は「もう若手じゃない」と真剣な眼差しを向ける。磐田でフル稼働するのはもちろん、日本代表も明確な目標として定めている。
「試合に出ている選手が見られると思うし、チームの順位が上がれば上がるほど注目されると思う。試合に出るということは状態がいいということだし、それ(代表入り)は目標にしている。絵馬にも書いたことなので」
中村俊輔とはクラブハウスの風呂で一緒になることが多いそうで、言葉を交わす機会もある。「プレーを見て感じようとは思っているし、練習からでも負けないようにと意識している」と決意を口にした。
サックスブルーの10番は、今シーズンの磐田の鍵を握る存在だ。ピッチ内での働きは言うまでもなく、若手らチームメイトを飛躍させうるからでもある。彼を語る時、『期待』と『信頼』は同義だ。
小川らの決意を聞く限り、中村俊輔加入による化学反応はすでに起き始めている。
(取材・文:青木務)
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