ロゴ変更の狙いとは
カーザ・ミランのロゴ【写真:Getty Images】
実は今回のユベントスと同じ意図で抜本的なロゴ変更を敢行したチームがもう一つある。同じくイタリア・セリエAのミランだ。2014年に新クラブオフィス「カーザ・ミラン」をオープンした際に、ミランは同施設のイメージロゴを発表。2014/2015シーズンのアウェイユニフォームには同ロゴをエンブレムとして使用した。
こちらのロゴも従来のエンブレムと比較すると非常にシンプルなデザインとなっていたため、ファンからはユニフォーム・エンブレムとしての使用に対して批判が相次いだ。結局、翌年のアウェイユニフォームは従来のエンブレムに回帰している。それでも、ミランがカーザ・ミランのロゴを強く推しだしたことには明確な理由があったと考えている。同クラブのグッズマーケティングにおける新たなブランドイメージ確立を狙ったのだ。
欧州サッカー連盟(UEFA)によってクラブの収支バランスを整えるための規則であるファイナンシャル・フェアプレー(FFP)が導入された現在の欧州サッカー界において、グッズ販売はクラブの貴重な収益源の一つだ。サッカークラブの主な収益源を挙げると、「スタジアムチケット収益」「放映権収益」「グッズ収益」の3要素が挙げられる。行政やリーグによる影響を受けるスタジアムチケット収益と放映権収益に比べると、グッズ収益は各クラブが工夫を凝らすことで十分に成長させる余地の残す分野といえるだろう。
ミランがグッズマーケティングのために新たなロゴを打ち出した理由は、従来のエンブレムデザインはアパレルや食器といったグッズ商品とデザイン上の相性が悪いためだろう。現行のエンブレムはブランドロゴに比べるとデザインが複雑で、グッズ商品において主張が強すぎるという問題がある。どうしても“サッカーグッズ”の枠を超えたデザイン性の追求は難しい。
一方で、カーザ・ミランのロゴや今回のユベントス新ロゴは明らかにグッズマーケティングを念頭におかれたものとなっており、ユニフォーム以外にも様々なグッズのロゴとして展開できる汎用性の高いデザインとなっている。今回、ユベントスが革新的だった点は、クラブエンブレムそのものをグッズマーケティングに傾倒したデザインに変更したことだ。