増加を辿るプレミアから中国への移籍。オスカルに続きD・コスタも?
件数を増し、脂の乗った20代後半の選手も現れ始めた、欧州リーグから中国スーパーリーグへの移籍事例。プレミアリーグ勢も例外ではない。今冬には、チェルシーから25歳のオスカルと29歳のジョン・オビ・ミケルが、それぞれ上海と天津へと既に去った。本稿執筆時点では、同じくチェルシーのジエゴ・コスタが、手取りで週給30万ポンド(約4200万円)という高待遇での中国行きの噂で渦中の人となってもいる。
この傾向に意見を求められると、元プロ選手の識者から一介のファンまで、イングランド人の多くが「グッド・ラック」と口にする。但し、「頑張れ」と幸運を祈っているわけではない。実際に意味するところは、「せいぜい頑張れや」という皮肉。“プレミア母国民”は、国を挙げて国内サッカー界の強化を図る中国によるスター選手引き抜きに不安を覚える以前に、世界屈指の人気と実力、そして経済力をも誇る母国リーグを後にして、サッカー後進国の世界的には無名なリーグでのプレーを好む選手が単純に信じられずにいる。
数年前までのように、引退間近だったポール・ガスコイン、若い頃からクラブを転々としたニコラ・アネルカ、チェルシーで悲願のCL優勝を達成した直後だったディディエ・ドログバなど、キャリア終盤の選手が中国からの誘いに乗る分には「最後の一稼ぎ」として理解されていた。
しかし、ピーク年齢手前のオスカルのような事例が発生すると、プレミア歴20年のアーセン・ベンゲル監督も「驚き」を露わにし、元イングランド代表DFのジェイミー・キャラガーなどは「恥」という言葉まで口をついた。ミケルやオスカルとは違い、今季のアントニオ・コンテ新体制下でも主軸となっているコスタの噂に関しては、マーク・ローレンソン、ポール・スコールズ、アラン・シアラーと、「いっそのこと売ってしまえ」と厳しく語る識者が日に日に増えていった。
稼いでこそプロであり、年俸が2倍3倍に跳ね上がる移籍話に興味を示すなという方が難しいとも思えるが、今時のプレミア強豪では控え選手でさえ「百万長者人生」のレールに乗っている状態だ。
後半の守備固め要員的なミケルでさえ、年に5億円台の給与を得る立場にあった。オスカルなどは、欧州主要リーグの他クラブでもレギュラーの座と高給を手にできたはずだ。それなのになぜ中国なのか? イングランド人は納得できずにいる。