上海上港のブラジル人トリオ。フッキ、エウケソン、オスカル(左から)【写真:Getty Images】
ついに“爆買い”が止まるのか。中国サッカー協会が16日に発表した同国1部リーグの外国人枠規定の変更が話題を呼んでいる。
これまで中国1部ではAFCチャンピオンズリーグ(ACL)で採用されている「3人+アジア枠1人」よりも多い、「4人+アジア枠1人」というルールが採用されていた。
しかし、新たなルールではアジア枠が撤廃されて「+1人」の特別枠がなくなり、ベンチ入りできるの外国人選手は国籍に関係なく「3人」までとなる。そして今回のルール変更は3月に開幕する新シーズンからいきなり適用されることになった。
選手登録できるのは「最大5人」と変わらないが、高額な移籍金や給与を支払って欧米から引き抜いてきた多くの外国人選手が飼い殺し状態になる可能性がある。つまり莫大な額の投資が無駄になってしまう危険があるということだ。
例えば今冬の移籍市場でブラジル代表MFオスカルらを獲得した上海上港はかなり大きな影響を受ける。現在所属する外国人選手はオスカルの他にエウケソン、フッキ、リカルド・カルバーリョ、ジェーン・クアッシ、オディル・アフメドフ、キム・チュヨンと7人もいる。
すでに登録のリーグ戦の登録上限である5人を超えているため2人放出しなければならない。昨季最終節のスタメンにはフッキ、エウケソン、クアッシ、キム・チュヨンが出場しており、いずれも主力級なため難しい決断を迫られる。
仮に5人を選手登録したとしても、オスカルやフッキ、エウケソンを主力として試合に使えば、残る2人はベンチ入りすらできない。また、ACLの「+アジア枠1人」を意識し、今冬の移籍市場で700万ユーロ(約8億5000万円)を投じて獲得したウズベキスタン代表のアフメドフは、このままだとリーグ戦に選手登録すらされずACL専用になってしまうかもしれない。
上海上港のような事例は中国1部リーグのほとんどのクラブに当てはまる。現時点で外国人枠を余らせているのは16クラブ中5クラブのみだ。アジア人選手の「+1人」枠がなくなるため、韓国人やオーストラリア人選手はこれまでのように重宝されなくなってしまうかもしれない。
現地メディアは今回の急なルール変更には中国サッカー協会上層部の意向が強く働いていると報じている。自国内に蓄えられた資金が、国外からの選手獲得のためにどんどん外へ出ていってしまうことを懸念しているということだろう。
当然優秀な中国人選手を発掘したり、育てたりすることも目的として考えられる。その証拠に「毎試合23歳以下の選手を2人以上ベンチ入りさせ、必ず1人は先発出場させなければならない」というルールも加えられた。
だが、多額の資金をつぎ込んでサッカークラブを会社の広告塔のように使ってきた中国各クラブのオーナーたちは、外国人スター選手が減ってリーグの魅力が薄れたと判断したらすぐに投資から手を引いてしまうかもしれない。
国策としてサッカーの強化を推し進めてきた中国は、リーグ開幕6週間前に大きなルール変更に踏み切った。それは選手たちへに影響が出るだけでなく、クラブやリーグ全体を揺るがしかねないものだ。
ヨーロッパや南米のクラブは中国クラブによる”爆買い”の恩恵を受けている側面もあるため、今後の中国の動向はアジアを越え、サッカー界全体に多大な影響を及ぼすだろう。
【了】