「正常化請負人」のもと巻き返しへ
再建劇を演出しているピオーリ監督には「ノルマリッツァトーレ(正常化請負人)」というあだ名が付けられた。どうも「ノルマーレ(正常、普通)」という言い方がお気に召さなかったらしい本人は「ポテンツィアトーレ(強化請負人)でありたい」と記者会見で語っていたが、ともかく今のインテルは正常に機能し始めている。
組織守備が機能し、ミランダやジェイソン・ムリージョが慌ててカバーした末にミスを犯すようなシーンは減った。それでいて、最終ラインの位置はオランダ流の攻撃サッカーを敷いたデ・ブールの時代と遜色ないくらいに高めだ。
そして、走力とスピード溢れるアタッカー陣の特性を素直に活かした切り替えの早いサッカーで、失った勝ち点を懸命に集めてきている。マルセロ・ブロゾビッチやジョフレイ・コンドグビアなど、前監督のもとで煮え湯を飲まされていた選手たちも急激に復調しており、チームのムードは良い。
当面の課題はこの調子を持続していくことにあるが、選手の地力はあるので見通しは暗くはない。ヨーロッパリーグから敗退したのはクラブにとっては間違いなく失態ではあるが、リーグ戦においては他のライバルに対し体力上のアドバンテージともなりうる。
マウロ・イカルディがほぼ出ずっぱりとなっているCFを除き、各ポジションには戦力が充実し、主力とリザーブとでそれほど実力差は生じていない。チームの慢性的な人材不足となっていた中盤の底にも、ラフプレーの多かったフェリペ・メロを放出した一方でアタランタで急成長中の若手ロベルト・ガリアルディーニを引っ張ってきた。
巻き返しへの下地は整っている。このまま安定した成長を続ければ、シーズン後半に上位を捕まえることも不可能ではない。あとは欧州クラブでの経験が少ない現フロントがシーズン序盤のような愚を犯さず、ピオーリ監督をはじめとした現場を落ち着いてサポートできるかどうかが問われるだろう。