鹿島の伝統。高卒有望選手の育成方針
山本は早稲田大学から2008シーズンに加入したジュビロで左サイドバックへコンバートされたが、いまではパス、クロス、ドリブル、ブルドアアップ、堅実な守備と総合力が極めて高い存在へと成長。空中戦でも強さを発揮し、元日のフロンターレとの天皇杯決勝の先制弾など、ここ一番という場面でゴールも決めている。
もっとも、6月には32歳となるだけに、アントラーズとしてはリスクマネジメントも講じておかなければいけない。実際、抱えていた左ひざの痛みを悪化させて、前半だけで山本がベンチへ退いた天皇杯決勝は、後半になってアントラーズが劣勢を強いられる展開に様変わりしてしまった。
急きょ代役を務めたのは元韓国代表ファン・ソッコ。しかし、本職はセンターバックとあって、ポジショニングが微妙にずれる。後半9分に決められたFW小林悠の同点弾、同20分に左ポストを直撃した小林のあわや逆転のシュートは、いずれもアントラーズから見て左サイドを突破されたものだった。
同じ轍を踏まないためにも、山本が万全の状態でプレーできる間に、バトンを託すべき後継者を育てる。小田だけでなく左利きの三竿を獲得したことからも、アントラーズが抱く危機感が伝わってくる。25歳の三竿はベルマーレでは3バックの左を主戦場としてきたが、もちろん4バックの左も務められる。
加えて、アントラーズはチーム創設以来、高卒の有望株を獲得したときは、3シーズンほどを同じポジションのベテラン選手と競わせてきた。レジェンドの背中を見ながら切磋琢磨させていく過程で、チームの伝統やスピリッツなどを伝授させて、20代の前半にして一本立ちさせる。
ルーキーでいきなりレギュラーを獲得したDF内田篤人(シャルケ)の例外もあるが、FW柳沢敦(アントラーズコーチ)、小笠原やGK曽ヶ端準のベテラン勢、MF本山雅志(ギラヴァンツ北九州)、FW大迫勇也(ケルン)、そして昌子や土居といった選手たちが同じ方針のもとで成長してきた。