外国人GKという難しい立場にいる川島永嗣
右サイドでコンビを組むサイドアタッカーでプレーメーカーのフロリアン・トバンも「サカイとはお互いの動きが理解できていてとてもやりやすい」と語る。
第18節のリール戦でも、酒井が左サイドに回り込んでゴール前のトバンにピンポイントのクロス。トバンのオーバーヘッドシュートはクロスバーの上を越えたが、トバンはすかさず酒井の好プレーに親指を立てて応えていた。
地元記者も、当初は「攻撃面では良いものを見せているが、守備に不安がある」と話していたが、最近は守備面の評価も上がり、地元紙『ラ・プロヴァンス』の採点も、月間平均は8月から3、4、4、4、6と右肩上がり(10点満点)。攻守両面で好プレーが光った12月のディジョン戦とリール戦ではチーム最高点の「7」がつけられた。
今季の前半戦は、怪我で欠場した11節を除く18試合に出場。酒井はマルセイユにとってなくてはならないメンバーの一人だ。
川島が入団したメスは、以前はリーグ1常連だったがここ10年はリーグ2、はたまた3部落ちも経験。安定せずに行ったり来たりを繰り返す“ドアマットチーム”と化している。しかし過去にはフランスカップ2回、リーグカップ1回の優勝経験もあり、CLを含む欧州カップ戦出場経験もある歴史のあるクラブだ。
指揮をとるのは、約1年前に着任したフィリップ・ヒンシュベルジェール。16歳で育成組織に入団してから33歳で引退するまでメス一筋だったクラブOBでもある。
スコットランドのダンディー・ユナイテッドを半年で退団して昨夏、川島はメスに入団した。希少なポジションであるGKは、代表選手を育成すべく、自国選手を優先して使うリーグが多い。グアルディオラやバティストゥータらをかき集めていた当時のカタールでさえ、GKだけは自国の選手に限っていたほどだ。
それがGKへの評価がさらに厳しい欧州マーケットとなれば移籍先を見つけるのは相当困難だったと思うが、その中でもとりわけGKの逸材が豊富なフランスリーグのクラブと日本人GKとして契約したことは、川島本人にとっても手応えのあるステップだったと思う。