欧州最古のサポーターズ・グループ
フーリガンの語源と発生を見れば、あきらかにサポーターズ・グループ(ウルトラス)とは違うことがわかる。ちなみに欧州で最も旧いサポーターズ・グループは、1950年10月28日にクロアチアでハイデュク・スプリトを応援する船乗りたちが結成した「トルシーダ・ウルトラス」だ。トルシーダとはブラジル・ポルトガル語でサポーターの意味である。
ハイデュク・スプリトはこのグループの応援に力を得て、旧ユーゴスラビア内での最大のライバルだったレッドスター・ベオグラードを2-1で破る歴史的快挙を成し遂げた。
なぜ歴史的か、と言えば、それまでハイデュク・スクリプトはほとんどレッドスター・ベオグラードに勝ったためしがなく、決して強豪とは言えないクラブだったからだ。
そしてその後7試合無敗で、その後に強豪の仲間入りをするきっかけをつかんだというから、いかにトルシーダ・ウルトラスの応援がチームをサポートしたかがうかがわれるだろう。サポーターとはかくあるべし、という見本のようなエピソードである。
その後、トルシーダ・ウルトラスはハイデュク・スプリトとともに、ユーゴスラビア解体、クロアチア独立の激動を乗り越えながら、またいくつかに分裂しながらもまだ存続している。公式ホームページの充実ぶりに、彼らの活動の歴史と伝統を感じる。
ジャーナリストのダグラス・ビーティが書いた『英国のダービーマッチ』(白水社)を翻訳しているとき、一番頭を悩ませたのが「ファン」と「サポーター」を英国の人たちはいったいどう区別しているのか、ということだった。
原文通りにfanはファンに、supporterはサポーターと訳したのだが、Jリーグのクラブを応援している一人として「そこはサポーターと呼ぶのではないか?」と言いたくなる箇所があった。
熱烈にチームや選手を応援している人たちも「ファン」とされていて、サポーターとは呼ばれない。愛の深さだけでは、ファンとサポーターは区別できないものらしい。