「アトレティコ方式」を導入したレアル。鉱脈を捨てなかったジダン
アンチェロッティが出口を見出すまでのレアルは、バルサに似て非なるチームにすぎなかった。流麗なパスワーク、BBCのアタックラインは確かに強力だったけれども、相変わらず攻守のバランスを欠き、個の力によるゴリ押しが目立っていた。
13-14シーズン、アンチェロッティ監督はアトレティコ・マドリーの戦法を採り入れる。アトレティコの4-4-2がバルセロナに対して有効だったからだ。国王杯でバルセロナを破ると、CL決勝では本家アトレティコにも勝利した。
アンチェロッティは完全に4-4-2にしたのではなく、4-3-3と4-4-2を状況によって変化させている。基本は4-3-3だが、相手と状況によっては4-4-2に変わる。そのときにFWまたはMFとしてスイッチ役を担ったのがディ・マリアだった。
強力なFWを擁するレアルのカウンターアタックは世界一といっていい。堅守のメドさえつけば速攻は折り紙付き。堅守速攻とポゼッションを兼ね備えるオールマイティという道筋を探し当てた。
グアルディオラ監督の時代にピークを迎えたバルセロナは、圧倒的なボールポゼッションとプレッシング守備の組み合わせで攻守の循環を作り上げた。一方、レアルにはプレッシングの練度と機動力が欠けていて、攻撃力は文句なしだが常に攻守のバランスに問題を抱えてきた。
しかし、アンチェロッティ監督がアトレティコ方式を採り入れたことで、はじめて理論的にバルセロナを上回る可能性を示した。ポゼッション型の最高峰であるバルサ、堅守速攻の雄・アトレティコ、両者のいいところどりである。
ところが、レアルのオールマイティ・スタイルは確立されなかった。ほとんどが格下相手の試合になるレアルには4-4-2を使う機会が少なすぎたのだ。そもそもアンチェロッティが「絶対に放出するな」と、唯一注文をつけていたディ・マリアをクラブはあっさり手放してしまっていた。
ただ、アンチェロッティ監督の横でコーチとして一部始終を見てきたジダンは、探り当てた鉱脈を捨てなかった。