アンチェロッティが見出した「出口」
いつの時代でも、最高クラスのアタッカーを擁するスター軍団がレアル・マドリーである。現在はBBCと呼ばれるベイル、ベンゼマ、ロナウドがいる。1950年代にはディ・ステファノとプスカシュ、60年代はアマンシオ、70年代サンティリャーナ、80年代はブトラゲーニョとウーゴ・サンチェス、90年代はラウール、その後は銀河系時代にブラジル人のロナウド……攻撃力は常に素晴らしい。このクラブの歴代監督にとって常に課題となるのは守備である。
ところが厄介なことに、守備に力を入れすぎてもダメなのだ。カペッロはレアルの監督を二度やり、二度ともリーグ優勝しているのに、どちらも1シーズンで退任している。守備的でレアルらしくないと批判されていた。実際は守備的というには当たらず、少し攻守のバランスを整えた程度なのだが、このクラブにおいて堅実は臆病という評価にしかならない。
近年で上手くやったのはデル・ボスケ監督だ。ジダン、フィーゴ、ロナウド、ラウール、ロベルト・カルロスと攻撃過多のメンバー構成の中で、ぎりぎりのバランスを探り当てていた。決して堅実ではなかったが、豪華攻撃陣が叩き出す得点を失点が上回らないぎりぎりのセンを維持できていた。
モウリーニョ監督も成績は良かったが、ライバルのバルセロナが強大すぎて、対抗措置として相手が気を悪くするような手法を用いたため、レアルの監督としては品がないという批判を浴びた。バルサ戦で守備的な戦法を採ったのも印象を悪くした。
同じ攻撃型でもバルセロナに機能性で水を開けられていた時期に、出口を見つけたのがデシマ(CL10冠)を達成したアンチェロッティ監督である。落ち着いた立ち居振る舞い、スタープレーヤーを尊重する態度はレアルの指揮官に相応しいものだったが、彼の功績は機能性で一歩も二歩も先を行くバルセロナを上回る道筋をつけたことだ。