FC岐阜をめぐる歪んだ権力構造の実態
次にパワーを振るわれた側のFC岐阜はその後、どのように歩んできたか。この4年について検証したい。件の文書がCLAから県庁に送られて来ると、これに対して古田肇岐阜県知事は、ライセンスの不交付を恐れて今西と服部を守ろうとせず、即座に解任を言い渡した。
かつてFC岐阜がJリーグに加盟する際にリーグ側から出された条件は、今西がFC岐阜の社長であること(これ自体矛盾であるが)とされており、その意味では長年、岐阜に尽くした恩人の労に報いるどころか仇で返したと言える。そもそもが不当な解任要求であり、ライセンスが下りるか、否かという即物的な問題に拘泥するのではなく、首長であるならば少なくとも今西が長年やってきたホームタウン活動を精査した上で岐阜の地域スポーツ100年の計を考慮すべきであった。
その上、古田知事はクビにする際、今西の就任前の経営陣がこしらえた1億5000万円の債務保証を今西から外さなかった。実は事前に県庁ではJリーグと内通していた商工労働部の小林出職員によって今西降ろしの密約は進んでおり、これも拙著『徳は孤ならず』(集英社インターナショナル)に載せたが、早い段階から知事レクの文書には債務保証問題についても言及されていた。
「留意点として●FC岐阜は十六銀行から1億5739万円に上る借入れを行っており、これには今西社長の個人保証が付いている模様(無担保1億1000万円、県市保証協会4739万円)。十六銀行と今西社長とFC岐阜の負担について整理する必要あり」
ここで今西の1億円の個人保証について自覚しているにもかかわらず解任後も新経営陣に引継ぎをさせずに押し付けたままであったことを考えると、今西の人の良さにつけ込んだ極めて不誠実な行為であったと言えよう。この件について私は古田知事に今年4度目の取材を申し込んだが、またも断られた。
古田知事は2012年4月26日の定例会見で、2000万円を出資する筆頭株主の県の立場として「Jリーグの予算管理団体に指定されても増資はしない」と明言、岐阜で唯一のプロクラブがその独自性をJリーグに奪われてしまう由々しき事態にもかかわらず、冷淡なコメントを発している。一過性の国体の強化対策の事業費には5億1300万円もの巨費を投下しているにもかかわらずである。
私が情報公開請求した2012年7月の経済界とのFC岐阜に関する意見交換会の議事録も「資料がない」という理由で出てこなかった。しかし、県庁の会議室で行われ、冒頭のあいさつや進行を知事が行った会議の議事録を県が録っていないはずがない。
事実、同席していた岐阜市からは出てきたのだ。これについては市のスタッフが「読めば分かりますが、FC岐阜に対する知事のあまりの力の入れなさが分かるんで出さなかったと思うんですよ」と証言している。
今西の後任は古田知事の指名によって県庁職員OBの薫田大二郎が就任した。薫田は古田の選挙参謀でもある。これはワンポイントリリーフで2014年にFC岐阜の新しいスポンサーとして、Jトラストが名乗りを上げると、同社から岐阜出身の恩田聖敬が新しい社長として送り込まれてきた。