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Jリーグ 8年前

Jリーグクラブライセンス事務局の暴挙。不可解な人事介入を追う【後編】

text by 木村元彦 photo by Getty Images

独立性が危ぶまれるエア上訴機関?

 以前よりサッカー協会の会長選出方法などが問題視されており(ようやく選挙で決まるようになったのは周知の通りである)、FIFAから勧告を受けて今年4月から制度が変わったのである。

 望月弁護士は多くの弁護士との共著『スポーツガナバンス実践ガイドブック』(民事法研究会刊行)の中で、司法改革によってサッカー協会内に公正・独立性のある「不服申し立て委員会」が新設されたことを評価しつつもJFAはスポーツ紛争を日本国内で調停が出来るJSAA(日本スポーツ仲裁機構)による自動応諾を採択しておらず、そのために不服申し立て委員会の決定に対する上訴は国内機関ではなくスイスのCASにしか許されないという問題点の指摘をしている。クラブライセンスの裁定方法については最終決定とされるABの中立性が担保されておらず、FIFAが提起した権限の分散どころか、権限の集中と上訴の実質上の停止がある。

 クラブライセンス制度の重要性は誰もが感じており、それ自体が大切なシステムであることに変わりはない。しかしこれだけ欠陥だらけなものでは運用する人間の資質によって左右されてしまう。そして初代ライセンサーは運用するのに適した人材ではなかったということだ。問題が起きるという欠陥制度の指摘の以前に、すでに今西、服部の解任という理不尽な人事介入事件が実際に起きたのだから。

 朝日新聞はスタイリストをつけたJPBL大河チェアマンのポートレイトを載せる前に、メディアとしてこれらの問題について取材をする責務があるはずだ。朝日の著しい劣化を感じるのはこういうときである。

 同紙は2007年に起きた我那覇和樹選手(当時川崎フロンターレ)のドーピング冤罪事件のときも、クロと判定した当時のドーピングコントロール委員長による現場医師の裁量権を狭める一方的な主張のみ(2007年9月5日「私の視点」欄)を掲載して事件の本質をあやふやにしてしまった。

 あらためて思うが、報道機関がスポーツ団体のスポンサーをすることは自殺行為である。朝日の著しい凋落は吉田調書や佐野眞一の部落差別記事事件以前にここから始まったと私は見ている。

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