清武加入も序列を落とす悔しい前半戦に
2016年を3位で終えたセビージャの躍進は、間違いなくリーガエスパニョーラ前半戦における大きなトピックの1つである。
1試合ごとに、また試合の中でも3バック、4バック、1トップ、2トップを自在に使い分け、選手起用も猫の目のごとく変化しているが、ポゼッションをベースとした縦に速いサッカーを展開する点では一貫している。バルセロナに次ぐリーグ2位のポゼッション率とリーグ4位の平均パス本数がサンパオリイズムの浸透を表している。バルセロナとの対決でも敗れはしたものの互角に渡り合い、アトレティコ・マドリーには勝利を収めて新チームのポテンシャルを見せつけた。
また、監督自身のリーガへのアジャストという意味において、チリ代表時代からタッグを組むスペイン人戦術家のファンマ・リージョアシスタントコーチの存在も非常に大きいところだろう。
個人に目を向けると、リーガ全体を通じても1試合平均78本という最多のパスを供給しているMFスティーブン・エンゾンジの存在は大きい。抜群の身体能力を活かし、フィールドの幅広い部分をカバーしている。また、ナスリも決定的場面の演出はもちろん、時にビルドアップにも参加するなど、チームにクリエイティビティをもたらしている。
そして、日本人ファンも期待した清武だったが、不本意な結果に終わっている。開幕戦でゴールを決めるなど順調なスタートを切ったが、ナスリの加入以降、序列を落としてしまった。
モンチSD(スポーツディレクター)主導のもと、清武の獲得にゴーサインを出した現場のエメリ監督が直後に退団してしまったことがそもそもの不運だった。また、日本代表参加に伴う移動の問題や、語学力の問題なども指摘されているが、この点についても、完璧主義者のサンパオリ監督にしてみれば、変幻自在に変化するセビージャのサッカーを展開する上で、自身の意図を完璧に理解できない選手が使いにくいのは当然なことであろう。清武のクオリティは評価されているだけに非常に惜しいところだ。