2つ目のキーワード「若手の台頭」
称賛以上に批判にさらされたレ・コン・ビン【写真:Getty Images】
徐々に調子を落としていったレ・コン・ビンだったが、前線で誰より精力的に動き回って若いチームを鼓舞。1stレグを1-2で落として迎えた2ndレグの国歌斉唱で涙を流す姿は国民の心を打った。ラストマッチは、1点を追う展開となった残り15分、既に交代枠を使い切った後でGKがレッドカードで退場するという絶望的な状況からベトナムが奇跡の逆転劇を演じて延長に突入。
しかし、最後は力尽きてトータルスコア3-4でベトナムが敗戦。120分フル出場した“ベトナムの英雄”は、試合終了のホイッスルが鳴ると同時に膝から崩れ落ち、この瞬間にベトナムサッカーの一つの時代が終わりを告げた。
思い返せば、称賛以上に批判にさらされた現役生活だった。常にスケープゴートにされ、それでも背番号9をつけて、ピッチに立ち続けた。レ・コン・ビンは、今大会で代表通算出場記録を85試合、通算得点記録を51ゴールに伸ばして自身が持つ歴代最多記録を更新。偉大な記録とともに、多くのファンの記憶に残る選手として、惜しまれながらもユニフォームを脱いだ。
去る者がいれば、来る者もいる。今大会で国民が最も熱いまなざしを向けたのは、“ベトナムのメッシ”の異名で知られるFWグエン・コン・フオンをはじめとする次世代の活躍だった。二つ目のキーワードは、若手の台頭だ。
海外メディアから“ベトナム黄金世代”などと紹介され、国内では“コン・フオン世代”の呼び名で通っている彼らは、いずれもベトナム1部ホアン・アイン・ザライ(HAGL)の下部組織HAGLアーセナルJMGアカデミーの出身。現在、20~21歳の彼らだが、最近はA代表にも定着。このうち、J2横浜FCのMFグエン・トゥアン・アインは怪我で欠場となったが、今大会では韓国1部仁川ユナイテッドのMFルオン・スアン・チュオンがゲームメーカーとして抜群の存在感を発揮した。