費消型ではなく投資型の経営者を増やすために
クラブライセンス制度そのものは、アジアサッカー連盟(AFC)が加盟国に対して、ACLの参加資格として導入を通達。これを受けた日本サッカー協会がJリーグに委託する形で、運用が開始された。
ゆえにJリーグ単体では変更などを決められないが、費消型ではなく投資型の経営者を数多く輩出して、Jリーグ全体が発展していくためにも、まずはリーグ内の意見を集約させる意向だ。
「自己資本が本当にぎりぎりで、債務超過ではないけれども基礎体力もほとんどない、という状況で経営しているクラブへ投資と言ってもそれは無理な話であり、これまで通りクラブライセンス制度が必要になってきます。
一方である程度の自己資本を蓄えて、勝負に出られるようになったクラブにとって、クラブライセンス制度はどうなのかということを、複眼的に見ていく必要があると思っています」
12月の理事会で、プロ野球・横浜DeNAベイスターズ前球団社長の池田純氏の特任理事招聘を決めたのも、Jクラブの経営者の投資マインドを向上させる指南役とするためだ。
球団社長を務めた5年間で約25億円の赤字を黒字経営に転じさせた、40歳の青年実業家の登用を熱望したのは他でもない、村井チェアマンだった。
「新たな観客層の喚起、女性の集客に対する努力、チームのブランディング、ネットメディアを活用したプロモーションなど、サッカー界として学ぶべきところが広範囲に渡って多々あると感じているので」
イギリスの動画配信大手パフォーム・グループが提供するスポーツのライブストリーミングサービス『DAZN(ダ・ゾーン)』と締結した、来シーズンから10年、総額約2100億円にのぼる巨額の放映権契約が大きな注目を集めているJリーグ。しかし、放映権料を原資として増額される均等配分金や賞金、新設される理念強化配分金を含めて、すべては「始めの一歩」にすぎない。
今回発表された2016シーズンを総括する『J.LEAGUE PUB REPORT 2016 WINTER』でも謳われている2つの理想、「Jリーグですばらしいサッカーがプレーされている」と「Jリーグのすばらしさが多くの人に伝わっている」を実現させるために――。2ステージ制を2年で1ステージ制へ差し戻したように、忌憚なき議論とタブーなき改革をJリーグはこれからも積極的に進めていく。
(取材・文:藤江直人)
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