千里の道の一歩
鹿島アントラーズはJリーグで最も多くのタイトルを獲得しているが、プレースタイルはひと言で表すなら「堅実」だろうか。極端に攻撃的でも守備的でもなく、戦術的にも特殊なものは何もない。
フォーメーションも基本的に4-4-2で変わらず。そして、そのままクラブワールドカップの決勝まで勝ち進み、レアル・マドリーに対しても、いつもどおりの鹿島だった。
クラブワールドカップの前身であるトヨタカップ(インターコンチネンタルカップ)が日本で開始したころ、まだJリーグはなかった。そのころはまだ、欧州と南米の王者による一騎打ちは雲の上の試合、遠くに仰ぎ見る山の頂のようだった。
やがて日本にもプロリーグが発足し、最初のステージ優勝を鹿島が成し遂げた。山の麓ぐらいまでは来ていたと思う。そして今、山頂目前の絶壁へJリーグのクラブが手をかけた。
そこまでと、ここからには、また違いはある。だが、最初に頂上アタックを開始したのが鹿島だったのは感慨深い。Jリーグ開幕から、歩調を変えずに進んできた。
住友金属サッカー部から踏み出した一歩と、クラブワールドカップ決勝での一歩が、同じ一歩だと感じさせてくれるクラブ。相手がレアルでも、世界一を決める舞台でも、一歩は一歩。いつもどおりの鹿島であり、だからこそあれだけの試合ができたのではないか。
(文:西部謙司)
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