鹿島に勢いを与えたマドリーの怠惰
けれどもこの両サイドバックは、敵陣に乗り込むことで生み出される犠牲を省みることがなかった。攻撃に意識を傾けすぎたあまりに守備の仕事を忘れ、彼らのサイドには広大なスペースが空いていたのである。鹿島が仕掛けた最後の猛攻を前に、3バックは完全に見捨てられていた。
そして、この一戦でマドリーが見せた最大の欠陥はメンタル面にあった。優等感、注意力の欠如、はたまた怠惰……。どの表現を用いてもかまわないが、タイトルがかかった試合のいくつかの時間帯で、そういったものを感じさせることは許されないはずだ。
マドリーは1-0とした後にまるで眠りこけたようになり、鹿島のリアクションを許した。鹿島の増長はマドリーがそういう状況を供したためにほかならず、彼らの得点の場面で欧州王者は守備のインテンシティーを欠いていた。
正直に言って、鹿島は技術、戦術、フィジカルとすべての面でマドリーに劣っている。が、実際よりも優れたチームと自惚れさせてはいけない。鹿島は延長戦に突入するまで、自分たちが強大な存在であるとの感覚を得てしまっていた。マドリーは鹿島に威圧感を与えるどころか、逆に酸素を供給していたのである。
(文:エンリケ・オルテゴ【マルカ】/翻訳・構成:江間慎一郎)
【了】