開催国枠だが、意義ある経験を得られている
埼玉スタジアムで浦和レッズに逆転勝ちし、アウェイゴール数の差で歓喜の雄叫びをあげたチャンピオンシップ決勝第2戦後のこと。小笠原が言ってきた言葉の意味がわかったと、昌子は笑顔を浮かべている。
「何が鹿島の伝統かと聞かれたら正直、わからんけど、僕たちが言えるのは満男さんとソガさん(曽ヶ端)の2人こそが伝統なんじゃないかと。いまでも2人を中心としたチームであることは間違いないですし、2人についていけば勝てるんじゃないか、と思わせる背中をいつも見せてくれるので」
小笠原が唱え続けてきた“方程式”に則れば、下馬評を覆してのJ1制覇で再びアントラーズは強くなった。右肩上がりの軌跡は初めて臨むクラブワールドカップでも続いている、と鈴木も力を込める。
「こういう大会はベテランの力というのが必要になってくると思うし、いまはすごくいい流れで来ているので、これを崩さないように。次の試合まで間隔が短いので、いい準備をして臨みたい」
市立吹田サッカースタジアムを舞台に、再び中2日で迎える準決勝の相手は南米大陸代表のアトレティコ・ナシオナル(コロンビア)。盟友・小笠原の胸中を代弁するように、曽ヶ端はこんな言葉を残している。
「ACLを勝ち上がって、という形ではなく開催国枠という形ですけれども、それでもここ(準決勝)を経験できるのはチームにとっても選手個々にとっても意味があるし、またレベルアップするきっかけにもなる。僕自身、この年齢でクラブワールドカップを初めて経験できることは大きなことだと思っています」
キックオフは19時半。過去にレッズ、ガンバ大阪、サンフレッチェ広島、柏レイソルが打ち破れなかったベスト4の壁を越えたとき、アジア勢初の決勝進出という快挙が常勝軍団の歴史に刻まれる。
(取材・文:藤江直人)
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