“未知の世界”に翻弄された前半
アフリカ人特有の身体能力の高さ、しなやかな身のこなし、そして一気にトップスピードに到達する加速力。初めて遭遇する“未知の世界”に前半のアントラーズは戸惑い、攻守両面で後手を踏み続けた。
前半だけで11本ものシュートを浴び、4度の決定的なピンチを招いた。この日が24歳の誕生日だったディフェンスリーダーの昌子源は、そのうち2度でスピードと強さに翻弄されている。
13分にMFタペロ・モレナに一瞬にして置き去りにされ、背後を突かれた。29分には身長167センチのパーシー・タウとの競り合いでバランスを崩し、半ば強引に体を入れ替えられてしまった。
いずれの場面でも、小笠原と並ぶ37歳の大ベテラン、ゴールキーパーの曽ヶ端準が完璧なまでに防波堤の役割を演じる。モレナの一撃を右手で、タウのそれは左手で弾き返してゴールを割らせない。
31分には左サイドからのアーリークロスに、ファーサイドからフリーの状態でFWハマ・ビリアトが飛び込むもシュートはバーの上へ。曽ヶ端の存在感が、最後の詰めでビリアトを焦らせたのかもしれない。
35分にはゴールの左上へ飛んできたMFサムエル・マブンダのミドル弾をジャンプ一番、両手で弾き返す。アントラーズを救った守護神はしかし、プレースタイル同様に立ち居振る舞いも冷静沈着だった。
「もちろんゴールキーパーの仕事とはそういう(シュートを止める)ところですし、ディフェンスの選手が最後までしっかりとついてくれたおかげで、無理な体勢で打ったシュートもありましたからね。僕が弾いた後のこぼれ球にも、相手よりも早く味方の選手が反応してくれましたので」
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