コロンビア代表を襲う悲劇。動機不明の凶行
94年のアメリカW杯。コロンビア代表は優勝候補の一角に名を連ねていた。コロンビアサッカー界のレジェンドにあたるカルロス・バルデラマ、アトレティコ・ナシオナルの出身でイタリアで活躍したアスプリージャなどを中心に、イギータ、アンドレス・エスコバルら錚々たる顔ぶれがそろった。
ところが前評判とは裏腹にグループステージであえなく敗退。のみならず、格下のアメリカ戦ではアンドレス・エスコバルがオウンゴールを献上した末に敗れてしまう。そして帰国後まもなく、アンドレス・エスコバルはメデジンのレストランの駐車場で射殺されてしまったのだ。《エスコバルの悲劇》と呼ばれる事件でサッカー賭博にかかわる闇勢力の関与など様々な憶測を呼んだが、動機は解明されていない。
こうしてアトレティコ・ナシオナルには「ダーティー」や「悲劇」のイメージがつきまとったが、パブロ・エスコバルが死ぬと麻薬マフィアが衰退、国内の治安が回復していくにしたがって生まれ変わりつつあった。
その1人のスター選手が、94年のリーグ優勝の立役者となった点取り屋、ファン・パブロ・アンヘルだった。のちにプレミアリーグのアストン・ヴィラでも活躍する彼は甘いマスクでファンを魅了した。
90年代から2000年初頭の低迷期にあえいでいたコロンビアA代表のエースを務めていたのも彼だった。そして今日――。アルゼンチン人が基礎を作り、麻薬マネーに踊らされたチームは国内で確固たる地位を築いている。
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