岡山退団を発表。現役続行については未定
岩政は自らを「やれるところまでやる、という考え方をもつ選手ではない」と自己分析する。来年1月には35歳になる。個人的には2シーズンで完全燃焼した感が強い闘将は、過酷な戦いを終えてから、愛してやまない家族との久しぶりの団らんを楽しみながら、ファジアーノ側との話し合いを重ねていった。
「自分に対するファジアーノの期待もわかっていますし、その期待に応えられる自信がなくなっていればやらないでしょうね。とにかく、来年自分がやりたいと思うことがどこにあるか。
もっとみんなに言い続けることができず、その結果としてみんなの日常を変えることができなかった僕が、これからもいることが大事なのかどうなのか。その点を見極めながら、この先を考えなきゃいけない。
幸いにも大きなけがをしなかったこともあって、(自分自身の将来を)考える機会がなかなかなかったんですけど、今回がそれなのかな、と。ものごととは起こるべくして起こると思っていますので。今回起こったことが自分にどういう意味をもたらすのか。それ次第でしょうね。力不足と自分ができなかったことを、受け止めたうえで次を考えます」
セレッソ戦から4日が経過した8日午後に、岩政の退団がファジアーノから発表された。クラブを通じて発表された岩政のコメントには、こんな下りが綴られている。
「私は『クラブの次なる目標へのDNAを作ってほしい』と言われ、ここに呼ばれました。それを私は結果への責任であり、覚悟だと解釈しました。だから、ファジアーノ岡山で最後にできる私の仕事は、ここでけじめをつけることだと思います。
そして、この2年間の経験をクラブの歴史に上積みし、新たに変わっていくことがこのクラブの未来なのだと確信しています」
セレッソに敗れ、岡山へと戻るチームバスの車内で更新したブログに「岡山の皆さんと一緒にこんなにも熱くなれた2016年を私は一生忘れません」と偽らざる思いを綴った岩政は、退団発表後に再びブログに言葉を紡いでいる。
「本来は時間をいただき、引退するのかどうかも同時に発表したいと思っていましたが、こうした事情もあり、引退に関してはまだ決断しておりません。そこは少し冷静に、まずはあらゆる情報を集めながら、将来を考えていこうと思っています」
熱くて、強くて、すべてにおいて大きくて、凛とした背中を仲間やファン・サポーターに見せ続け、それでいてピュアで、哲学的な言葉を駆使して思いを伝える稀有な男。J1昇格プレーオフを通して残した数々の言葉に強烈な生き様を残して、闘将はファジアーノでの2年間に別れを告げた。
(取材・文:藤江直人)
【了】