クラブ全体がもつタイトル獲得へ向けての執着心
小笠原の交代を含め、伝統でもある勝負強さを前面に押し出させる采配で、7シーズンぶり8度目の年間王者を獲得。国内三大タイトルの獲得数を、他のJクラブの追随を許さない「18」に伸ばした石井監督は、胸を張りながら逆境に強い秘訣をこう語る。
「現場のスタッフ、選手だけでなく、クラブ全体がもつタイトル獲得へ向けての執着心だと思います」
対照的に10シーズンぶり2度目となる年間王者獲得を逃したレッズの選手たちは、呆然とした表情を浮かべながら、狂喜乱舞するアントラーズの姿を目に焼きつけた。
「僕個人としては、リーグ戦とチャンピオンシップは別物だと思っている。もちろんこのチャンピオンシップでは(準決勝で)鹿島が川崎を倒して、アウェイゴールの差ではありますが、僕たちも上回られた。チャンピオンシップの王者は鹿島だと認めざるをえない」
いつもは取材エリアでじょう舌な槙野も、さすがに言葉は少なかった。しかしながら、応対した短い時間のなかでアントラーズを称えるとともに、強烈なプライドをも見え隠れさせた。
レッズが年間を通して獲得した勝ち点「74」、勝利数「23」は歴代最多タイ記録であり、総失点「28」もJ1が18チーム体制になった2005シーズン以降では、2006シーズンのレッズと並んで年間勝ち点1位チームのなかで最も少ない。打ち立てられた数字が放つまばゆい輝きは、まったく色褪せることはない。
ペトロヴィッチ監督も「決して下を向くような結果ではなかった」とシーズンを通して最も安定した結果を残し、セカンドステージをも制した2016年を振り返った。
「選手、スタッフ、クラブ、そしてサポーター。すべての人たちに私は言いたい。我々は素晴らしいシーズンを送ったということ。胸を張って、誇りをもって前を向けると思っている。もし誰かがこの結果に対して批判するのであれば、それは監督である私に向けてほしい」
ただひとつ、リーグ戦とはまったく異質となる、短期決戦のチャンピオンシップを勝ち抜くための何かが足りなかった。特にアントラーズが攻める構図がより鮮明になった第2戦の後半で見られた対照的な交代のカードの切り方に、両チームの間に存在した、些細ながらも最終的には明と暗とを分け隔てるに至る「差」が凝縮されていた。
(取材・文:藤江直人)
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