先を行くサッカー界の差別禁止の取り組み。大きな社会貢献に
梁氏はサッカーの専門家ではないが、日本サッカー界のこれまでの差別への取り組みには注視している。浦和レッズのサポーターが「JAPANESE ONLY」と書かれた横断幕を掲げた際には無観客試合の処分となり、横浜F・マリノスのサポーターが当時川崎フロンターレ所属のレナトに向けてバナナを差し出した行為には当該人物への無期限入場禁止処分が下った。
これらに対し、「差別禁止の取り組みのなかでは、国・自治体・政党よりもはるか先を行っている。日本で一番進んでいるかもしれない」と評価する梁氏。加えて「これらがなぜ差別にあたるのかまで明言されるともっといいと思います」と語る。どのような理由で差別なのか、広く一般に知られるようになることが重要だと梁氏は強調する。
「差別に当たる理由は大きく分けて2つあります。1つは繰り返し述べている“グループへの不平等”。もう1つは差別によって社会を破壊した歴史との連続性です。欧州ではナチスと関連がある言葉・行為はすべてNGです」
例えば、スタジアムで「88」と書かれたシャツを着る。これは完全に差別行為に当たるという。アルファベットの8番目は「H」。「ハイルヒトラー」を想起させるからだ。最悪の場合、この行為だけでも試合の没収など厳しい処分が下される可能性がある。
これらの基準の認知を進めていくことが差別を減らす一歩になる。サッカー界は昔から欧州との接点が多く、理解もしやすいはずだ。「サッカーから差別NGラインが浸透していけば……それは大きな社会貢献になりますよ」。梁氏の言葉は大げさではない。
(取材・文:植田路生)
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