チェルシー、0-3完敗の可能性がある一戦も制し8連勝
一方、チャンスを逃さなかったチェルシーでは、その背景にあるチームの自信を生み出した点において、メディアに「短期間でこれほどのインパクトをもたらしたプレミア新監督はいない」と称賛される資格がコンテにはある。
持ち駒の特性に適した3-4-3システムは、基本化を機に始まった連勝の中で3ポイントと同等以上に重要な自信をチェルシーに与えてきた。その証拠に、トッテナムとの前節といい、シティとの今回といい、選手たちはビッグゲームでリードを許しても慌てずに各自がやるべき仕事をして結果を出している。
自信溢れる選手の代表例には、目線で相手GKの裏をかいて駄目押しゴールを決めたエデン・アザールがいるが、3バック中央のダビド・ルイスも同様だ。展開を読んで重要なクリアやブロックを繰り返したシティ戦での守りは、「知的」で「堅実」。いずれも以前のルイスには当てはまらなかった表現だ。
ルイスが目立った理由には、4割弱にとどまったポゼッションもある。良し悪しの問題ではなく、攻撃の理想を貫くグアルディオラに対し、コンテには現実に妥協する覚悟もある証拠だ。
カウンターでシティを仕留める意識は、不動のスタメンだったネマニャ・マティッチの故障により、中盤中央のセスク・ファブレガス先発という変更を強いられた時点で更に強まっていたことだろう。反撃の狼煙を上げた1点目は、セスクが自陣深くからコスタに届けた完璧なロングパスによってもたらされた。最終スコアは、言わば「ポゼッション1-3カウンター」だ。
但し、「ポゼッション3-0カウンター」というスコアも現実的だった。連勝を「8」に伸ばしたことにより、開幕当初はダークホース扱いだったチェルシーが優勝の有力候補と目されるようにはなった。
だが、ホームでのリーグ戦で4試合続けて白星のないシティも、筆頭格から有力候補へと格下げされた程度にすぎない。コンテのチェルシーが先勝を収めた、グアルディオラのシティとの第1回対決が意味するもの。それは、プレミア史上最大の接戦が予想されていた今季優勝争いの、更なる激化と興味増大だ。
(取材・文:山中忍【ロンドン】)
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