ずっと目標にしてきた土屋征夫
私の知る、ピッチでミスに怯え、おどおどしていた飯田は、もうどこにもいない。まじめで、責任感の強さゆえに表出していた動揺は、前に出る一歩へと形を変えた。もともと取材対応は丁寧な人だったが、現在はそこに貫禄が加わった。長い時間をかけて育んだ確固たるものは、こうも人を変えるのだと率直に驚く。
「ヴェルディ時代、一緒にプレーさせてもらったバウルさん(土屋征夫/ヴァンフォーレ甲府)は、練習ではキャッキャ言いながら楽しくやっているのに、すごいプレーを連発する。それで、いざ試合となれば闘うスイッチがバシッと入るんです。僕はずっとそれを目指してきました。最近になって、ようやく少しは近づけているかなと感じているところですね」(飯田)
他方、野球のメジャーリーグ。連投しても故障せず、使い減りしない投手のことを「ラバー・アーム」(ゴムの腕)と呼ぶ。しなやかな強さを持ち、42歳でJ1チームのスタメンを張る土屋はその典型だが、飯田はそれとはまた別種の剛健さがある。
2016シーズン、J2クライマックス。シーズン終盤、松本山雅は北海道コンサドーレ札幌、清水エスパルスに競り負け、3位でJ1昇格プレーオフに回った。
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