浦和の強さを支える準備の姿勢
チーム全体からただよう自信は、チーム在籍5シーズン目の槙野智章も感じている。
「僕は2012年に浦和に来て、監督とも一緒にやってきて、毎年のように優勝争いし、あと少しのところで逃してきた。ただ今年に関してはしっかりとルヴァンカップも獲った。Jリーグも年間1位になって、今日もしっかり勝てた。その要因は攻撃よりも守備だと思っています。もちろん4、5年前は監督の求める攻撃主体のパスサッカーのところを常に考えてやっていたけれども、今年に限ってはそれにプラスアルファ、守備を徹底的にチームに植え付けたことが結果に結びついている」
今季の浦和は、あと一歩のところでタイトルを逃し続けてきたこれまでの姿ではない。リーグ戦34試合で28失点はJ1で最も少なく、少し調子を落としてもその都度しっかりと立て直して勝利を手にしてきた。
CS決勝第1戦でもホームの鹿島にほとんど決定的なチャンスを作らせず、終盤の猛攻にも全員で守って耐え切った。今季チームとして取り組んできたことの成果が遺憾なく発揮された会心の試合だったと言える。
西川は「基本を大事にできた」「いつも通りやれた」「日頃の準備で意識していたことを出せた」など、日常の準備について述べることが多い。ただ聞いているだけでは普通のことに聞こえるが、最後は「基本」や「いつも通り」であることが最も重要になるとプレーで証明して見せた。
それが遠藤康との1対1の場面であり、チーム全体の守備意識の高さであり、最後に勝ち切る力の源でもある。目先の結果に左右されて自分のプレーを変えるのではなく、基本に忠実に、準備してきたことをブレずにやり続けることが今の浦和の強さを支えている。
今年の浦和はこれまでと違う。チームには自信がみなぎっており、悲願のリーグ優勝に手をかけている状態だ。ここで「いつも通り」のスタンスを崩さないことが、何度も回り道を余儀なくされた歓喜への近道になるだろう。
(取材:舩木渉、ショーン・キャロル、チェーザレ・ポレンギ/文:舩木渉)
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