ルヴァンカップの失点も判断基準を変えず
日本代表GKが相手選手との駆け引きを制した一連のプレーを見て、今季のYBCルヴァンカップ決勝を思い出した。
あの時は浦和の選手の不用意なプレーからガンバ大阪のFWアデミウソンにセンターライン付近でボールを奪われ試合の流れを大きく変える先制点を奪われた。
その場面では卓越した技術を持つブラジル人FWを前に、GKとして対峙した西川はあえて飛び込むことを選ばずギリギリまで待って、真正面から駆け引きを挑んだ結果ゴールを許した。しかし、それで自らのプレーの判断基準を変えないのが西川だ。
もしCS決勝で遠藤康の仕掛けに対して飛び込んでいたら、容易にかわされてゴールを決められていただろう。「慌てて飛び込むよりはステイしながら、“いつも通り”やれた」からこそ、ギリギリの駆け引きを制すことができた。
後半開始早々、鹿島に先制点を奪われていれば展開は大きく変わっていたはずだ。柏木の落ち着き払ったコントロールからのクロスも、興梠のPK奪取も、阿部のゴールも生まれていなかったかもしれない。そういう意味で西川が見せたプレーは1点以上の重みを持っていた。
浦和の最後尾を支える守護神・西川はルヴァンカップ優勝の後、こんなことを言っていた。
「チームにとってもミシャ(ミハイロ・ペトロヴィッチ監督)にとっても、今日は初めての経験ができた。『優勝するために必要なのはこれなんだ』というのを一人ひとりが感じられていると思うし、楽して勝っているわけではない。その味を経験できたことで、また来週も監督がよく言う規律を大事にしながら戦えるし、僕はひとつ獲ればいい意味で調子に乗っていけるチームでもあると思っている」
その言葉は虚勢ではなく確固たる自信があったからこそ出てきたものだった。実際に浦和はルヴァンカップ決勝の後のリーグ戦3試合をひとつも落とすことなく2ndステージ優勝を決め、いまは年間優勝まであと一歩のところまで来ている。