「2ステージ制+チャンピオンシップ」による皮肉な構図
精神的な動揺は、ピッチにおけるパフォーマンスに少なからず影響を及ぼすということなのだろう。もっとも、アントラーズにはチーム創成期から脈々と受け継がれてきた常勝軍団の歴史が傷口を最小限に留めさせ、瞬く間に快方へと向かわせる究極の処方箋と化した。
翻ってタイトルとはまだ無縁のフロンターレは、雨降って地固まる、とはならなかった。J1に定着してまだ12シーズン目。歴史の濃密さは、17個ものタイトルを誇る「オリジナル10」のアントラーズにかなわない。クラブひと筋14年目の中村にしても、故障を治癒させて間に合わせることが優先された。
日本サッカー協会が定める規約では、契約が満了する選手はその6ヶ月前から別のクラブと交渉ができることになっている。来年1月末で契約が切れる大久保に対して、FC東京がフロンターレを通してオファーを出したのは10月下旬。その後の交渉を含めて、FC東京側に瑕疵はない。
もっとも、これまでと異なるのは、レギュラーシーズンが11月3日をもって終了したことだ。従来よりも約1ヶ月、昨シーズンと比べても19日も早い。各チームとも来シーズンへ向けた編成作業にすでに着手しているし、チャンピオンシップに出場する3チーム以外は、そうした動きがより顕著になる。
特に天皇杯でも緒戦の2回戦すでに敗退している名古屋は、契約を延長しなかったボスコ・ジュロヴスキー監督の後任を一刻も早く決めて、1年でJ1へ復帰するためのチーム編成を加速させる必要にも迫られていた。そうした過程で情報が漏れるのは、どうしても避けられない部分もある。
Jリーグはすでに、来シーズンから1ステージ制へ戻すことを決めている。議論の過程で村井満チェアマンは日本プロサッカー選手会(JPFA)の協力を得て、J1の全所属選手に対するヒアリングを実施。その結果として、大多数から「Jリーグのシーズンがいっせいに終わることが非常に重要」という意見を得た。
JPFAとしては「オフの期間の均等化」を、何よりも重要視している。しかし、実際問題として、最大で約2ヶ月を数えるオフの長さの差異にもたされる弊害は、選手たちのコンディション作りに大きな違いを生じさせるだけにとどまらない。
今シーズンのJ1の頂点を決める戦いの第一歩にして、攻撃力と伝統とが火花を散らす、白熱必至の準決勝をメンタル面で少なからずスポイルしていたのならば――。2年間で幕を閉じる「2ステージ制+チャンピオンシップ」は、Jリーグ自らが自分たちの首を絞める皮肉な構図をも生み出していたことになる。
(取材・文:藤江直人)
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