幾度もドラマを生んできた「等々力劇場」
試合時間が残り10分を切ってから決まったゴール数は12。ホームの等々力陸上競技場における川崎フロンターレの総得点が36だから、実に3分の1がスリリングな時間帯に生まれたことになる。
しかも、12のうち後半アディショナルタイムに飛び出したゴールが5を数える。9分間が表示された後半アディショナルタイムで2点差を追いつかれ、最後のワンプレーでFW小林悠が決め返して横浜F・マリノスを振り切った9月25日のセカンドステージ第13節は、未来永劫に語り継がれる死闘となるだろう。
予測不能のドラマを幾度も生んできたことから、いつしかフロンターレのホーム戦は「等々力劇場」と命名された。しかし、鹿島アントラーズを迎えた23日のJリーグチャンピオンシップ準決勝は、舞台の幕が上がらないまま5分間のアディショナルタイムを含めた後半が終わりを告げた。
スタンドを沸かせたのは、むしろアントラーズのほうだった。途中出場のFW赤崎秀平がフロンターレのパスをカットし、後半5分に値千金の先制弾を決めているFW金崎夢生へパス。韓国代表GKチョン・ソンリョンと競り合いながらゴールへ押し込んだ後半50分の歓喜は、金崎のハンドで取り消された。
直後の攻撃。パワープレーから右サイドを崩し、攻め上がったDFエウシーニョが切り返しから絶妙のクロスを送るも、DF谷口彰悟が放ったヘディング弾は無情にもゴールバーを大きく越えていく。そして、37歳のベテラン、GK曽ヶ端準がゴールキックを蹴った直後に主審のホイッスルが鳴り響いた。
ホームにおける今シーズン2度目の完封負けとともに、悲願の初タイトル獲得への夢がまたも道半ばで砕け散った。キャプテンのMF中村憲剛は十数秒も呆然とその場に立ち尽くし、エースのFW大久保嘉人はセンターサークル付近におもむろにひざまずいた。その頬を大粒の涙が伝っていた。
クラブ史上で最多を記録した年間総合勝ち点72は、浦和レッズの74に続く2位。アントラーズも3位につけているが、勝ち点差は13も開いている。34試合で68得点、つまり1試合平均で2ゴールを叩き出した数字もJ1ではナンバーワン。失点も昨シーズンの48から39へ大きく改善された。