必要なのは「大物の出場機会」よりも「練習場での時間」
フロントには「CLのないシーズン」が今季だったことが不幸中の幸いという認識もあっただろう。トップ4復帰が実現すれば、更新1年目のプレミア放映権契約によって前年より5000万ポンド(約70億円)近く多い“TVマネー”がもたらされることになる。
丁度、失うことになったCL出場に伴う収入見込みと同規模の額だ。加えて今季からは、タイの栄養ドリンク大手『カラバオ』によるトレーニングウェアへの広告スポンサー料として、年間1000万ポンド(約14億円)を得ることにもなっていた。
では、「欧州エリートの集い」に参加できないチームの精神的なダメージはどうなのか?
攻守に「汗」を重んじるアントニオ・コンテが新たに指揮を執る今季は、「頭脳と感覚」で勝負するセスク・ファブレガスにほとんど出番がない。最終ラインが4バックから3バックへと切り替えられた10月以降は、貴重な生え抜きキャプテンでもあるジョン・テリーが、怪我が癒えた後もベンチに座っている。
新監督へのアピールに意気込んでいたオスカルも、昨季でさえ個人的に気を吐いていたウィリアンも出場機会に恵まれない。CLの舞台はリーグ戦で先発できない彼らにとって、プライドとエゴの「マッサージ台」となり得ただろう。
しかしながら実際に出場していれば、プレミア王座奪回を優先して控え組中心のCL参戦が許されたとは思い難い。CLはクラブを牛耳るロシア人富豪にサッカー界参入を決意させた特別な大会だ。同時に、ホームグロウン枠を埋め切れないチェルシーは、U-21選手を除けば1軍登録22名の小所帯で今季のプレミアを戦わなければならない。
しかも、チームは新監督が立て直しに着手して間もない。となれば必要とされるのは、ベンチの大物に先発機会を与える欧州での試合よりも、新チームを作り上げる練習場での時間だ。