今季のCLを逃したチェルシー。経済的なダメージも
アウェイでのアストンビラ戦からの帰り道、友人のチェルシー番記者と「CLのない来季は少し旅費が浮くな」と言って苦笑したのは昨季終盤の4月。ファンでもある身として、2003年にチェルシーがロマン・アブラモビッチの資金力を得て以来初めてとなる「CLのないシーズン」を覚悟しながら、寂しさを覚えていたことは言うもでもない。
しかし、何事も前向きな姿勢が肝心。歴史的に栄光との縁が薄い歳月の方が長いクラブの「信者」としては、経験を通じて自己防衛本能のように備わっている姿勢でもある。
フリーランスの筆者は経費自己負担。規模の小さな西ロンドン地元紙に寄稿する彼も予算は最小限。欧州でのアウェイゲームをテント持参で取材に行くこともあるほどだ。
当時は、まだヨーロッパリーグ(EL)出場の可能性が残されてはいた。3年前には決勝の地でチェルシーの優勝を見届けた大会でもある。ちなみに筆者は市内だがテイクアウト専門中華料理店の2階、彼は遠い市外のホテルと、揃って格安のアムステルダム泊だったのだが、互いに“欧州2部リーグ”への返り咲きを望む気持ちはなかった。
翌シーズンの最優先目標となる国内トップ4復帰の妨げになるぐらいであれば、EL出場権を逃した方が良いとさえ思っていた。
同感のファンは多かったはずだ。近年はCL戦でさえ、グループステージではチケットが飛ぶように売れるというわけではない。スタンフォード・ブリッジの常連も観戦コストをセーブしようとするのだ。それがEL戦となれば、クラブはチケット代値下げを余儀なくされたに違いない。
一部には、EL出場枠も逃せばリーグ戦チケットが値上げされるのではないかという不安の声もあった。だが実際には、最終的に10位で昨季を終える前から価格の据え置きが決まっていた。
クラブが経済的なダメージには耐えられると踏んでいる証拠だ。アブラモビッチに頼り切っていたのは過去の話。現在のチェルシーは、今年に入って発表されたサッカー界の長者番付(デロイト社まとめ)で8位にランクされ、プレミアではユナイテッドとシティのマンチェスター勢とアーセナルに次ぐ4番手の収益力を誇る。