「パワープレーしてきてほしかった」(昌子源)
風間八宏監督は77分には板倉滉を下げて森本貴幸を送り出す。中盤を1枚削って前線に高さとパワーを加えた。そしてパワープレーに出る。しかし、これも鹿島の術中にはまっていた。
「川崎さんの戦い方だから何とも言う気はないけど」と前置きしたうえで昌子は語る。
「パワープレーしてきてほしかった、どちらかというと。川崎さんらしく最後まで攻めてきていたら、俺らもどんどんずれていってしまうから。結局単調になってきたらうちにはナオ(植田直通)もおるし、ナオが出ていないくても俺とかソッコが頑張って防ぐし、そういうのは正直最後の方は危ないシーンはあったけど、俺らもハッキリできるから。跳ね返す、とにかく適当でいいからクリア」
最初から最後まで鹿島が思い通りに試合をコントロールしていた。ゴールを重ねて主導権を握るのではなく、守備で相手の力を奪う。そして最少得点で勝ち切る。まさに「鹿島らしさ」が表れたゲームだった。
鹿島がリーグ戦終盤で4連敗していたチームとは全く「別物」だったことにも触れておきたい。これぞ勝利の文化を長年積み上げてきた“常勝軍団”の姿だろう。
「(今週は)マンさんから言葉じゃなく何かが出ていた。怖かった。ただいるだけでちょっとピリピリしているというか。それが監督にも伝わるし、監督から俺らにも伝わるし。この1週間というのは本当にピリピリしていた」
昌子が「マンさん」と呼ぶのは、鹿島を前身の住友金属工業時代から知る鈴木満常務取締役強化部長だ。クラブのトップがこれまでに築いてきた文化を象徴し、無言でも選手たちに伝わっていく。そんなメンタリティがここぞで生きた。
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