今季の軌跡が凝縮された金子翔太の決勝ゴール
ヴォルティス戦の後半28分に飛び出し、結果としてエスパルスをJ1昇格へ導いたFW金子翔太の決勝ゴールは、ここまでの軌跡が凝縮されていたといっていい。右タッチライン際から絶妙のクロスを送ったのは鄭大世。そして、小林監督は比較的高い位置を取るヴォルティスの左ワイド・アレックスの背後、つまりエスパルスにとって右サイドからビルドアップしろと、前半から何度も指示を飛ばしていた。
果たして、右サイドでパスを受けた右サイドバック・三浦弦太が丁寧なインサイドキックで鄭大世へ縦パスを通す。抜け出した背番号9の視界には、マークを引きつけてニアサイドへ入るMF枝村匠馬の背後のスペースに、トップスピードで走り込んでくる163センチの金子の姿がはっきりととらえられていた。
「ホントに(三浦)弦太が前半からまったくビルドアップができなくて。ハーフタイムにロッカールームで『僕が右サイドに流れたときは、相手のワイドの後ろへ普通にインサイドキックでパスをくれればいい』と言っていたんですけど、あの場面でやっとくれましたね。
僕自身はクロスには自信があった。受け手としていつも研究しているので、どこに、どのようにして出してほしいかがわかる。そこへ金子が相手の背後に隠れるのではなく、相手の裏に入ってきてくれたのがよかった。高いボールをあげなくてもよかったので」
空中戦を挑んでは、184センチあるヴォルティスのDF福元洋平には太刀打ちできない。地上戦で自分の力を発揮するにはどうしたらいいのか。金子、鄭大世、そして三浦の思考回路が鮮やかにシンクロし、相手ゴールキーパーが一歩も動けない、豪快な左足からのボレーがネットを揺らした。